7月の音を楽しむ会はピアニスト伊東晶子さんによる演奏会が行われました。フランスでピアノを研鑽された伊東さんは今回で音を楽しむ会出演5回目、ナレーションでの出演は朗読ミュージカルでおなじみの森田克子さんでした。
曲の内容を詩にまとめたナレーションの後、演奏が始まる《ピアノと朗読によるドビュッシーの世界》。伊東さんの原点となるフランス音楽の魅力を凝縮したこの曲群は演奏会の大切な導入部分で、楽しく聴いてもらうことを意識して構成された演目からは伊東さんの温かみある人柄を感じました。
「水の反映」
”めくるめく光の中で音が躍る。水面を舞台に軽やかに、しなやかに、時には弾け、時には眠りを誘いつつ、華麗に舞う音の群れ。その煌めきは水に跳ね返りつつ、やがて静寂の中に溶けてゆく…”
「雨の庭」
”ドビュッシーの時代に活躍した印象派の画家、マネやモネの描いた絵画からは、光や影の揺らぎとともに、音楽が聴こえてくると言う人がいます。ではドビュッシーの音楽からは、どんな風景がみえてくるのでしょう。ピアノ曲集「版画」より「雨の庭」…。子供たちが楽しく遊んでいる庭に、アラ、大変!雨が…!”
「月の光」
”静けさが世界を包む。夜の帳の中で宝石のように煌めくのは、月から降り注ぐ、光の音符! 舞い降りる、光の天使!”
ノスタルジックなメロディーが六花の形を象りながら涼しげに会場に響き渡ったババジャニアン作曲「エレジー ”ハチャトゥリアンの思い出”」。
超絶技巧の速さでリズミカルに奏でられたモンサルバーチェ作曲「イヴェットのためのソナタ 第3楽章」にはきらきら星のテーマが編み込まれており音楽が層を成して心地よく聴き入ることができました。
「いろんな音楽に挑戦したい!」という伊東さんのアグレッシブで新しい一面を感じられたこの2曲は演奏会の中でも特に象徴的でした。
伊東さんが曲の物語を読んでから演奏したショパン「バラード第1番」は一音一音が演奏会に余韻を残していくように広がっていき、アンコールのショパン「ノクターン 遺作」では有名なメロディーを織り交ぜた静謐な音楽が伝わってきました。
伊東さんの想いがぎゅっと込められた演奏会は気づけばあっという間で、まだまだ聴いていたいと思わせる素晴らしい音を楽しむ会となりました。
次回の音を楽しむ会は8月26日(月)、笛 福原寛さんです。
どうぞお楽しみに!
2019年7月28日日曜日
2019年7月18日木曜日
7月 古橋まどか 展 「ナンセンス、無体物、スト的状況」Madoka Furuhashi 「Nonsense, Intagible, Striking situations」
7月1日より大黒屋サロンにて、古橋まどか 展「ナンセンス、無体物、スト的状況」が開催されております。
古橋さんはロンドンのAAスクールオブアーキテクチャー インターメディエートスクール、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート美術修士課程を修了後、現在は同大学院芸術学科博士課程に在籍(休学中)、極めて日常に近い物に関するリサーチを基軸としたサイトスペシフィックな制作活動を展開しています。
2015年にイタリア北部、ブレーシャの街外れにある広大な採石場を訪れたことを契機に、原料が製品となる製造の過程とその過程を生み出す労働の力、目に見えないエネルギーに対しての興味、ものが成り立つ過程自体を空間に表出する試みを通して深化させてきました。
大黒屋での初個展となる本展では、イギリスのロンドン、イタリアのブレーシャ、インドネシアのジョグジャカルタ、メキシコのオアハカ、日本の瀬戸など、世界各地で制作された作品を展示しています。
素材に真鍮を用いた労働についての初期作品「Ⅱ quarto stato」は工場から原料でも製品でもないものを取り出すことによって無形のエネルギー(身体存在)を表現、「素材から人を感じられる」ようにと制作されました。
無形のエネルギーの源は身体。石灰を採石場で働く人が実際に着ている作業着に入れて、石膏にして取り出したモノと、岩の一部を組み合わせることで仕事をする人の定義を見出そうとした作品「Raw material, goods and human body」はインドネシアのジョグジャカルタの採石場で岩を採掘する人と石のタイルを製造する人達の仕事を一旦止めてもらった状況下で制作されました。科学的に分析した時、成分に汗が入っていることが必要だと考える古橋さん、「見た目と中身と内容が合うことが大事」と話しておられました。
瀬戸市の鉱山にて、陶土になる前の原土に雑木の灰釉をかけて制作された最新作「陶片」シリーズ。トラックの轍が付いた土をそのまま取り出したものもあり、土の部分によって水分が含まれる量が違っていたりと通常の焼き物より難易度が高いこの作品、リサーチの段階で「これだ」と感じたそうです。
考古学が好きだと語る古橋さん、過去の出来事を分析することが面白いのと同様に、今現在私達が生きている状況が未来の人達から見たらどう理解されるのかが気になるといいます。「モノから自分達がどう理解できるか、どう知識を得られるか、何を捉えるか」モノが示すメッセージを常に考え、達観した視点から現在の世界を見据え、自分と繋がった人達の人生(必ずしも記述されないそれぞれの匿名でパーソナルな歴史)を掘り下げた作品制作を続ける古橋さんの今後の展開がとても楽しみです。
古橋さんはロンドンのAAスクールオブアーキテクチャー インターメディエートスクール、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート美術修士課程を修了後、現在は同大学院芸術学科博士課程に在籍(休学中)、極めて日常に近い物に関するリサーチを基軸としたサイトスペシフィックな制作活動を展開しています。
2015年にイタリア北部、ブレーシャの街外れにある広大な採石場を訪れたことを契機に、原料が製品となる製造の過程とその過程を生み出す労働の力、目に見えないエネルギーに対しての興味、ものが成り立つ過程自体を空間に表出する試みを通して深化させてきました。
大黒屋での初個展となる本展では、イギリスのロンドン、イタリアのブレーシャ、インドネシアのジョグジャカルタ、メキシコのオアハカ、日本の瀬戸など、世界各地で制作された作品を展示しています。
素材に真鍮を用いた労働についての初期作品「Ⅱ quarto stato」は工場から原料でも製品でもないものを取り出すことによって無形のエネルギー(身体存在)を表現、「素材から人を感じられる」ようにと制作されました。
無形のエネルギーの源は身体。石灰を採石場で働く人が実際に着ている作業着に入れて、石膏にして取り出したモノと、岩の一部を組み合わせることで仕事をする人の定義を見出そうとした作品「Raw material, goods and human body」はインドネシアのジョグジャカルタの採石場で岩を採掘する人と石のタイルを製造する人達の仕事を一旦止めてもらった状況下で制作されました。科学的に分析した時、成分に汗が入っていることが必要だと考える古橋さん、「見た目と中身と内容が合うことが大事」と話しておられました。
瀬戸市の鉱山にて、陶土になる前の原土に雑木の灰釉をかけて制作された最新作「陶片」シリーズ。トラックの轍が付いた土をそのまま取り出したものもあり、土の部分によって水分が含まれる量が違っていたりと通常の焼き物より難易度が高いこの作品、リサーチの段階で「これだ」と感じたそうです。
メキシコの美術館で展示した際のインスタレーション |
今年の4月まで1年間滞在していたメキシコで制作されたインスタレーション作品を舞台にメキシコのパフォーマンスアーティストのMotos Ninjaが行ったパフォーマンスの映像も公開しています。
考古学が好きだと語る古橋さん、過去の出来事を分析することが面白いのと同様に、今現在私達が生きている状況が未来の人達から見たらどう理解されるのかが気になるといいます。「モノから自分達がどう理解できるか、どう知識を得られるか、何を捉えるか」モノが示すメッセージを常に考え、達観した視点から現在の世界を見据え、自分と繋がった人達の人生(必ずしも記述されないそれぞれの匿名でパーソナルな歴史)を掘り下げた作品制作を続ける古橋さんの今後の展開がとても楽しみです。
本展は古橋さんのこれまでの実践をタイムラインにご覧いただける貴重な機会となります。展示は7月30日(火)まで開催、ぜひこの機会にご高覧ください。