2022年最初の音を楽しむ会はソプラノ 西田真以さん、ピアノ 吉本有佑さんによる演奏会を行いました。今回は西田さんがイタリアにいる時の半分は費やしたというG.ロッシーニの作曲した曲がメインでした。
1曲目、2曲目にG.ロッシーニ作曲「音楽の夜会」より、“約束” “非難” を歌って頂きました。観客に優しく語りかけるような “約束” に対し、嘆き悲しみ訴えかけてくるような “非難” という、2曲の対比を楽しむことができました。
続いて、“饗宴” 。曲名をそのまま表現したような酒場で飲んで、歌って、騒ぐ様子を西田さんの歌声だけではなく、表情、仕草で感じることができました。
4曲目、5曲目には “誘い” “アルプスの羊飼いの娘” を演奏。愛を告げる様子を叙情的に歌われている誘いに対し、アルプスの綺麗な街の中で明るく純粋な少女が街を訪れた旅人に話しかけている様子が頭に浮かぶアルプスの羊飼いの娘でした。
6曲目にはナポリ地方の舞踏曲「タランテラ 」の一種でもある “踊り” を披露。タランテラは毒グモのタランチュラに咬まれた時に、この踊りを踊ると治るという伝説や毒グモに刺されて死ぬまで踊り狂った伝説などが語源と言われています。西田さんによる踊りはクモの毒により気持ちが高揚している瞬間と毒により苦しみながらも踊らなければいけないつらい瞬間が鮮明に表現されていました。
7曲目は吉本有佑さんのピアノソロ、F,リスト作曲、ロッシーニによる2つのトランスクリプション “「第1曲」スタバート・マーテルのマリア” を演奏して頂きました。ピアノの落ち着いた音色の中に吉本さんの丁寧で温かい気持ちを感じられる1曲でした。
後半の3曲もG.ロッシー二による作曲曲。まずは、3週間で書き終えたというG.ロッシーニの真骨頂の曲「セビリアの理髪師」より “今の歌声は” を披露。ロジーナの伯爵に対する恋心を、伸びやかな歌声で表現して頂きました。
9曲目は「ウィリアム・テル」より “暗い森” イタリア語バージョン。G.ロッシーニが37歳の時に悩み、葛藤しながらも4ヶ月かけて作曲した名曲です。ウィリアム・テルの野望を胸に抱いている様子が西田さんの歌声、そして、吉本さんのピアノの音色によって巧みに表現されていました。
最後に「セミラミデ」より“麗しい光が”を演奏。この曲はG.ロッシーニがベートーヴェン作曲「交響曲第3番:英雄」に影響を受け、イタリアの歌劇場のために書いた最後の曲です。ロッシーニのベートーヴェンに対する、情熱を感じられる1曲でした。
アンコールにはウィンター・ワンダーランドを歌って頂きました。大黒屋の雪景色にぴったりな、明るくアップテンポな曲で、1月の音を楽しむ会は幕を閉じました。
西田さんの伸びやかで心に響く歌声だけではなく、吉本さんの繊細かつ丁寧な音色に魅了された音を楽しむ会となりました。