2024年10月26日土曜日

第245回 音を楽しむ会

10月の音を楽しむ会は、今回で第19回となる大黒屋オペラ、G.ヴェルディ作曲「アイーダ 第3幕 、第4幕」の公演でした。




~出演者~
            アイーダ:イ・スンジェさん(ソプラノ)
            ラダメス:城宏憲さん(テノール)
            アモナズロ:青山貴(バリトン)
            アムネリス:丸尾有香(メッゾ・ソプラノ)
            ピアノ:中橋健太郎左衛門さん




〜第1幕、第2幕のあらすじ〜
 エチオピア王女アイーダは、エジプトの捕虜となっていたが、身分を偽ってエジプトの王女アムネリスの奴隷として身の回りの世話をしている。敵国エジプトの若き衛兵隊長ラダメスとアイーダは密かに想いを寄せ合っているが、ラダメスはアイーダがエチオピアの王女であることを知らない。エジプト王女アムネリスもまたラダメスを愛しており、二人の王女は対立する運命となる。
 そして、ラダメスはエチオピア討伐の任務を果たし、エジプトに帰国する。その凱旋の場で、アイーダとエジプト王アモナズロが親子であること知る。自分の立場と愛に思い悩むアイーダとラダメス。二人の関係を利用し捲土重来を期すアモナズロ。それぞれの想いが交錯する。


〜第3幕、第4幕〜

夜のナイル川のほとりで一人、愛と祖国を失ったと沈痛な面持ちで想い馳せるアイーダ。

💡アイーダの繊細な感情をイ・スンジェさんの嫋やかな歌声で表現。


そこにアモナズロが現れ、ラダメスからエジプト軍の秘密を探るよう迫る。祖国と愛との間で苦悩するアイーダ。苦渋の決断で、アイーダはエチオピア王女の立場を取ることに。

💡青山さん演じるアモナズロの威厳のある味わい深い歌声は、物語の世界へと更に引き込んでいきます。


アモナズロが隠れた後、ラダメスが現れる。アイーダは二人で暮らす為に、国を捨て一緒に逃げようと促しますが、ラダメスは躊躇する。逃げることに対し、一度は躊躇したラダメスだったが、ともに逃げないなら「アムネリスのもとへいきなさい」と言われ、逃げる決心をする。

💡オペラでは定番の愛二重奏を、イ・スンジェさん、城さんの表現力豊かな高音で味合うことができました。


アイーダは急に冷静になり、エジプト軍が向かう行路を聞き出す。うっかり口を滑らしてしまったラダメス。そこにアモナズロが突然姿を現し、自分がエジプト軍の秘密をバラしてしまったことを知り愕然とする。

💡3人の想いが交錯する三重唱は、その緊迫感を会場にいる観衆にひしひしと感じさせます。


そこにアムネリスが登場し、「裏切り者!」とラダメスを詰る。しかし、アムネリスに襲いかかるアモナズロをラダメスは制し、アイーダとアモナズロを逃がす。

💡ラダメスのアイーダを守りたいという気持ちが強く感じられる名場面。城さんの華麗な歌声はよりラダメスの感情を引き立てます。


アムネリスはラダメスを死罪にすべきか助けるべきか、思い悩んだ末、ラダメスを呼び出し、アイーダを忘れるよう説得する。しかし、ラダメスは「アイーダの為に死ねるなら本望」と何の迷いもなく断る。裁判の判決は死罪となり、生きながら墓に入れられるという残酷な刑を宣告される。

💡アムネリスのラダメスへの愛と、その気持ちに応えてくれないラダメスへのやるせなさなど、繊細な感情表現を丸尾さんの淑やかな歌声で堪能することができました。


墓の中に一人幽閉されたラダメス。アイーダを思い返しているといるはずのないアイーダが暗闇から姿を現す。アイーダはラダメスと共に死のうと先に忍び込んでおり、ようやく二人の愛は成就する。そこへ喪服姿のアムネリスが現れ、鎮魂の祈りを捧げる。やがてラダメスとアイーダの声も途絶えていき、幕が閉じる。

💡これから死を迎える悲壮感、その中に温かく残る愛、相反する感情が混在する複雑のシーン。城さん、イ・スンジェさんの静謐な歌声が会場に溶け込んでいきます。さらに丸尾さんがカンテラを持って静かに登場し、粛粛とした場の空気感を中橋さんのピアノと共に引き立て、終幕となりました。


大黒屋サロンの特性を存分に活かした舞台構成、登場人物の感情を見事に表現していただいた5人の出演者の方々など、大黒屋オペラでしか味わえない、音の世界観を楽しむことができた音を楽しむ会となりました。






次回の音を楽しむ会は11月26日(火)、ピアノ 阿部海太郎さん、ヴォーカル 武田カオリさんのデュオ演奏です。

どうぞお楽しみに!

2024年10月4日金曜日

2024年10月 磯飛節子展

板室温泉大黒屋では10月4日より大黒屋サロンにて「磯飛節子展」を開催いたします。


磯飛さんは栃木県大田原市出身で、国内外から高く評価されている女性竹工芸作家の一人です。彼女は伝統的な竹工芸の技術を受け継ぎながらも、枠にとらわれない独自のスタイルを確立し、竹という自然素材に新たな魅力を引き出し、独自の感性で作品を生み出しています。磯飛の作品は、細く薄く成形された竹を巧みに操り、伝統的な編み技法に革新を加えたものです。ずらしや重ねの技法を駆使して生み出される独特の奥行きが特徴であり、その技術によって、竹の持つ柔らかさと強さが絶妙に調和した、繊細でありながら力強い作品が生まれます。また、竹を丁寧に染め分けることで、作品に微妙な色彩の変化と空気感を与える技術も、彼女の作品にさらなる深みをもたらしています。このような高度な技術と独創性は、竹工芸の分野で広く認められ、彼女の作品は国内外で多くの注目を集めています。



30代で竹工芸の世界に飛び込み、平成15年には日本伝統工芸展に初入選しました。その後、平成21年には栃木県文化奨励賞、平成22年には日本伝統工芸展で日本工芸会総裁賞を受賞するなど、その技術と表現力が高く評価され、数々の受賞歴を誇っています。彼女の作品には、伝統を尊重しつつも常に新たな挑戦を続ける姿勢が表れており、竹工芸の未来を切り拓く存在として大きな期待が寄せられています。



約6年ぶりとなる本展では、日本伝統工芸展に出品された作品をはじめ、花籃や盛籃、ブローチなど、日常で使用できる美しい作品約40点が展示されます。繊細な手仕事と伝統技法、そして独自の美意識が融合した作品群を通じて、竹工芸の新たな可能性と魅力を感じていただけます。また、磯飛が主宰する竹工芸教室の生徒たちによる作品も一部展示され、彼らが培ってきた技術と創造力も併せてご鑑賞いただけます。竹工芸の多様で豊かな表現を通じて、日本の伝統文化に触れる貴重な機会として、皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。

 

*会期終了翌日の10月30日(水)には磯飛節子による花籃製作のワークショップを開催いたします。このワークショップは昨年から大黒屋サロンにて不定期で開催しており、毎回好評を博しています。磯飛が直接指導し、竹を編み上げて花籃を完成させる過程を体験できる貴重な機会です。初心者から経験者まで、どなたでも参加いただけます。

竹工芸の魅力を肌で感じ、自らの手で作品を作り上げる楽しさを味わっていただけたら幸いです。参加をご希望の方は、大黒屋までお早めにご連絡ください。

*花籃製作ワークショップ

日程:10月30日(水)13:00-17:00

会場:大黒屋サロン  参加費:8,800円(材料費込) ←定員に達しました。



会期 : 2024 年10月4日(金) - 10月29日 (火) 10:00 - 17:00

※10月4日のみ13時から開館いたします。

※展示は宿泊以外の方もご覧いただけます。