2018年8月28日火曜日
第185回 音を楽しむ会
8月の音を楽しむ会はヴァイオリン漆原直美さんとヴィブラフォン/パーカッション/ピアノ服部恵さんによる演奏会が行われました。お二人は大学卒業後、ライブ演奏等で一緒に活動してきた旧知の仲だそうです。漆原さんは「大黒屋という素敵な空間で楽しく演奏したいです。クラシック楽曲をクラシックでない演奏法で演奏しますのでお客様にも楽しみを発見していただければいいなと思います。」と話していただきました。
1曲目ジャズのスタンダードナンバー「タイガーラグ」をヴァイオリンとヴィブラフォンのリズミカルな掛け合いで演奏されました。時々聴こえてくるポワンポワンというヴィブラフォンの音色に癒されました。
2曲目は漆原さんのソロ曲、バッハの「プレリュード~無伴奏パルティータより~」。ヴァイオリンの真髄ともいえる美しい音色が奏でられ、華やかな音楽の世界へ入り込むような1曲でした。会場のお客様もググっと世界に惹きこまれていくように見えました。
次はクラシック楽曲を他ジャンルにアレンジメントした3曲を披露していただきました。マスネ「タイスの瞑想曲」はスローテンポでメロウな優しい味わいの楽曲。Jフィナ「Bumble-Boogie~熊ん蜂より~」は直線と曲線的な音色が融合したクイックな楽曲。ブラームス「子守歌」はスッと眠りについていくような心が安らかになる楽曲となっていました。いずれの曲も二人の心が繋がって心地よい音楽が表現されていました。
6曲目は服部さん作曲「Thunder Jack」。当日の板室の空にも大きな入道雲が見えていましたが、厚い雷雲を思わせるような重厚感あるメロディーが轟きました。音がお腹に響くような臨場感がありました。
7曲目アイルランド民謡の「ロンドンデリー」が演奏される頃には陽も傾いて大黒屋の庭が青みがかっていました。曲を聴いていると夜の星空を予感させるような穏やかさを感じました。星座の煌めきのように一つ一つの音が響いているようでした。
8曲目は漆原さん曰く太っちょの髭を蓄えた大きな男の人がヴァイオリンを速弾きするイメージの「マスタッシュ」。服部さんはジャンベ(大きな木をくり抜いたものにヤギの皮が張られた打楽器)とピアノを使い分けて演奏されました。生命の鼓動のように逞しく打音が鳴り、強くしなやかにヴァイオリンの奏音が響いて会場を一気に盛り上げていました。
9曲目「Dear」は「大切な人を想って聴いていただけたら嬉しいです」と漆原さんが作曲した楽曲。目を閉じて聴きたくなるような温かい情緒ある音色で会場を魅了していました。
10曲目はパガニーニの「カプリス」。ヴァイオリンの音色から目で見えるような肌で触れるような質感を感じました。音がものの存在感を持っているようなとてもリアリティーのある楽曲でした。
アンコールはモンティの「チャルダッシュ」。躍動的なハイスピード演奏から最後はゆったりと広がりのある柔らかい音色が織りなされ会場を大いに沸かせました。
暑い時期が続いていますがお二人の演奏を聴いて爽やかで清々しい時間を過ごすことができたと思います。バラエティーに富んでいて心がはずむような素晴らしい音を楽しむ会でした。
次回の音を楽しむ会は9月26日(水)、ソプラノの森田克子さんです。
どうぞお楽しみに!
2018年8月10日金曜日
涼をもとめて 板室のひんやりクールスポットを歩く
稀に見る猛暑の折、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
大黒屋でも日中は暑い日がつづきますが、朝晩は20度くらいまで下がって夜はクーラーを使わずに過ごすことができます。山と川からの自然の冷気が板室をつつんでくれているからですね。
自然豊かな板室には、暑い日でも自然の冷気に包まれて涼しさの感じられるクールスポットがいくつもあります。それらクールスポットを巡る45分ほどのお散歩コースをご紹介いたします。
1ヶ所目はお庭から階段を降りてすぐの那珂川の川原。山から流れ出す清水が流れる川原は、30度を超える日でも20度後半とかなり涼しく浅瀬では川遊びを楽しむことができます。8日の立秋前後にはススキが穂を出し、黄色い月見草が花開くなど秋の風情も涼を添えてくれます。
2ヶ所目は保養の館に向かう湯川にかかる橋の上。川の冷たい水から立ち上ってくる冷気で橋の上はいつも涼しく、橋の目の前にある漆の木は板室で一番始めに紅葉します。
3ヶ所目は北の館前を左に曲がり、温泉神社の参道入口。入口に立つ観音様の周りは森からの冷気が爽やかで、脇から流れ出る湧き水のチョロチョロという音にも涼しさが感じられます。
4ヶ所目は温泉神社入口よりさらに道を奥に進んだ湯川の堰を望むことのできる橋の上。知る人ぞ知る穴場のクールスポットですが、板室で一番涼しくいつでもひんやりとした空気が感じられます。堰を流れ落ちる勢いの良い水の音は目を閉じると滝の近くにいるような気持ちになります。
2018年8月5日日曜日
山本雄基 アートを語る会
大黒屋での個展は今回で5回目、現在サロン展示中の山本雄基さんによるアートを語る会が行われました。プロジェクターで作品のイメージを見ながら制作について説明があり、独自の絵画論を熱く語っていただきました。
最初に、〇が特徴的な作品の制作過程について説明がありました。見える〇と見えない〇の層を積み重ねて構築される作品は「見えないけど感じる」ことを強く意識して制作されるそうです。見えるけど見えない、裏と表、明と暗、対立する要素をいかに「融和」させていくかが制作のポイントだといいます。シンプルな〇を使っていますがプロセスは奥深いなと感じました。
次に大黒屋という場を考えた今回の展示についてお話がありました。板室には自然の風景がパノラマのように広がっていて大黒屋は横の力が強い場所だそうで、過去3回の展示では横構図の作品をメインに展示していました。それに対して縦の力は人間が2本足で大地に立ったり塔やビルが建っているように人工的な要素を持っていて、今回はメインの作品を縦構図にしてどのように大黒屋の場と「融和」させていくか考えたそうです。
山本さんは現代美術作家として作品制作していることを強く自覚しているそうです。現代美術は一見するとどうやって見たらいいのか分からない要素を持っています。しかし、その「分からない」ことが「おもしろい」のだといいます。美術の歴史を勉強するうちに絵画特有のおもしろさを発見してその世界観に惹き付けられたそうで、絵画の表現手法の可能性を信じて今まで制作を続けてきたとお話しました。
実際の絵画制作をプロジェクターに映したイメージで実演しながら説明していただきました。絵の中で空間をコントロールしながら奥にあるものを手前に見せたり、見えている形と空間の矛盾を生み出す作品の仕組みの説明では、お客様から「おぉ~」と驚きの声も聞こえてきました。メインの作品についても説明があり、〇の配置で縦や横のラインが見えるように意識して制作されたそうです。
山本さんの作品は人工(=縦)と自然(=横)の存在を一つの画面に存在させ、人の目の錯覚を利用して矛盾が生じる画面構成になっています。しかし、絵を見ていると心が落ち着くような爽やかな気持ちになります。知性で捉えきれない矛盾ですが、感性によるバランス感覚では心地よさを生み出しています。これが山本さんのいう「融和」を目指した絵画の魅力ではないかと思いました。合理的な仕組みで成り立っている現代社会を感性の目で見つめてみたらどうだろうか、というメッセージを受け取ったようにも感じられたアートを語る会でした。
山本雄基さんの展示は8月30日(木)まで行われます。どうぞお運びくださいませ。
最初に、〇が特徴的な作品の制作過程について説明がありました。見える〇と見えない〇の層を積み重ねて構築される作品は「見えないけど感じる」ことを強く意識して制作されるそうです。見えるけど見えない、裏と表、明と暗、対立する要素をいかに「融和」させていくかが制作のポイントだといいます。シンプルな〇を使っていますがプロセスは奥深いなと感じました。
次に大黒屋という場を考えた今回の展示についてお話がありました。板室には自然の風景がパノラマのように広がっていて大黒屋は横の力が強い場所だそうで、過去3回の展示では横構図の作品をメインに展示していました。それに対して縦の力は人間が2本足で大地に立ったり塔やビルが建っているように人工的な要素を持っていて、今回はメインの作品を縦構図にしてどのように大黒屋の場と「融和」させていくか考えたそうです。
山本さんは現代美術作家として作品制作していることを強く自覚しているそうです。現代美術は一見するとどうやって見たらいいのか分からない要素を持っています。しかし、その「分からない」ことが「おもしろい」のだといいます。美術の歴史を勉強するうちに絵画特有のおもしろさを発見してその世界観に惹き付けられたそうで、絵画の表現手法の可能性を信じて今まで制作を続けてきたとお話しました。
実際の絵画制作をプロジェクターに映したイメージで実演しながら説明していただきました。絵の中で空間をコントロールしながら奥にあるものを手前に見せたり、見えている形と空間の矛盾を生み出す作品の仕組みの説明では、お客様から「おぉ~」と驚きの声も聞こえてきました。メインの作品についても説明があり、〇の配置で縦や横のラインが見えるように意識して制作されたそうです。
山本さんの作品は人工(=縦)と自然(=横)の存在を一つの画面に存在させ、人の目の錯覚を利用して矛盾が生じる画面構成になっています。しかし、絵を見ていると心が落ち着くような爽やかな気持ちになります。知性で捉えきれない矛盾ですが、感性によるバランス感覚では心地よさを生み出しています。これが山本さんのいう「融和」を目指した絵画の魅力ではないかと思いました。合理的な仕組みで成り立っている現代社会を感性の目で見つめてみたらどうだろうか、というメッセージを受け取ったようにも感じられたアートを語る会でした。
山本雄基さんの展示は8月30日(木)まで行われます。どうぞお運びくださいませ。
2018年8月1日水曜日
8月 山本雄基展
本日から大黒屋サロンにて「山本雄基展」が始まりました。
山本雄基さんは2010年に第5回大黒屋現代アート公募展で大賞を受賞されたのち、
ドイツでのレジデンスを経て現在国際的に作品を発表されているアーティストです。
大黒屋での展示は1年半ぶり、5回目となりました。
アクリル絵の具で円を描き、透明なアクリルメディウムの層を重ねてまた円を描くことで平面の中に重層的な奥行きが生み出される。また、絵の具を塗らずに層を重ねる無色のvoidの部分をつくることで有と無の多重の意味合いが広がっていく。
じっくり見ることにより様々な要素がみつかり、それでいて捉えどころのない曖昧さと法則性を感じさせる絵画は大黒屋の松の館客室にも飾られており、大黒屋のお客様にも長らく親しんでいただいています。山本さん自身、お客様が作品から様々な想像をしていらっしゃるのを聞くととても興味深いそうです。
本展で出品される作品は縦長の構図の作品が多く、大黒屋の場に調和させることを考えた作品が出品されています。大きな円と同じ存在感を小さな円に持たせるような作品やvoidの下に色を入れず、層の中に隠れるような作品など1つ1つの作品に異なる制作過程の法則が潜んでいます。
最近新しい制作スタジオにうつり、アーティスト同士で共同で運営を行うようになって日々多くの刺激を受けるようになったという山本さん。丸というモチーフや制作理念を貫きながら日々進化を続ける作品をぜひご覧ください。
アーティストトークは3日(金)20:00〜21:00。展示は30日まで開催しております。
フェイスブックにてより多くの会場写真を掲載しております。ぜひご覧ください。
大黒屋公式Facebook
山本雄基さんは2010年に第5回大黒屋現代アート公募展で大賞を受賞されたのち、
ドイツでのレジデンスを経て現在国際的に作品を発表されているアーティストです。
大黒屋での展示は1年半ぶり、5回目となりました。
アクリル絵の具で円を描き、透明なアクリルメディウムの層を重ねてまた円を描くことで平面の中に重層的な奥行きが生み出される。また、絵の具を塗らずに層を重ねる無色のvoidの部分をつくることで有と無の多重の意味合いが広がっていく。
じっくり見ることにより様々な要素がみつかり、それでいて捉えどころのない曖昧さと法則性を感じさせる絵画は大黒屋の松の館客室にも飾られており、大黒屋のお客様にも長らく親しんでいただいています。山本さん自身、お客様が作品から様々な想像をしていらっしゃるのを聞くととても興味深いそうです。
本展で出品される作品は縦長の構図の作品が多く、大黒屋の場に調和させることを考えた作品が出品されています。大きな円と同じ存在感を小さな円に持たせるような作品やvoidの下に色を入れず、層の中に隠れるような作品など1つ1つの作品に異なる制作過程の法則が潜んでいます。
最近新しい制作スタジオにうつり、アーティスト同士で共同で運営を行うようになって日々多くの刺激を受けるようになったという山本さん。丸というモチーフや制作理念を貫きながら日々進化を続ける作品をぜひご覧ください。
アーティストトークは3日(金)20:00〜21:00。展示は30日まで開催しております。
フェイスブックにてより多くの会場写真を掲載しております。ぜひご覧ください。
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