現在サロン展示中の八木史記さんによるアートを語る会が行われました。これまでの生い立ちと作品制作の関わりについてお話していただきました。
岩手県盛岡市出身、宮城県仙台市在住の八木さんは小さい頃から漫画など絵を描くことが好きだったそうです。宮城教育大学では彫刻研究室に入り石膏型取りでの人体塑像を制作していました。大学院まで制作を続けましたが石膏での制作に限界を感じ、様々な素材を使って試す中でセメント、コンクリートが自分に合うと思ったそうです。
少年時代、盛岡の住宅地に住んでいた八木さん。日が暮れた暗闇の中、学校の近くにある東北新幹線の橋脚が連なる風景を見て自分がとても小さい存在だと不安感、絶望感を感じたそうです。冷たく無機質で巨大なコンクリートの塊に圧倒された原体験がセメントを素材にした制作の基になっているといいます。
最初の頃は動物や花を造形しており器好きということで徐々に器の形も制作していきました。次に近年多発している自然災害をテーマに自然や大地の形である樹木を作り始めました。制作の構造として自然と自分が対比される関係性があるといいます。最新の制作として蔦が建築物を覆っている様子を形に変換したものがあります。人間が作ったものを自然が侵食していくようなイメージの壁掛けの作品は本展のために新しく生み出したスタイルです。
人間が作ったコンクリート、無機質で冷たくぶっきらぼうで無生物、意思を持たない存在に得体の知れない不気味感を以前は感じていましたが、年を経るごとにその印象や考え方が変わっていき、あえてその冷たい素材を使って安らぐ雰囲気を作りたいと思うようになったといいます。不気味な感覚を安らぎに変えたい。「感じ方は生まれた年代や育つ環境によって変わるもので自分のリアルな感覚で制作をしていきたい」とお話しました。人工と自然、相対する要素の間で感覚を磨いてきた八木さん独自の感性による考えを聞くことができたアートを語る会でした。
「アートは自分にとってなくてはならないもの」と語る八木さん、最後に○△□に言葉を入れて表現していただきました。
○=間
△=バランス
□=緊張
「緊張感のあるモノの構成で作品を制作し、空気感、雰囲気のある場で間を生み出し、全体のバランスを大事にしていきたいです」
八木史記さんの展示は10月30日(火)まで行われます。どうぞお運びくださいませ。