2021年7月26日月曜日

第212回 音を楽しむ会

 7月の音を楽しむ会はチェロ黒川正三さんとピアノ黒川文子さんによる演奏会を行いました。 

バッハ=グノー作曲「アヴェ・マリア」は祈りの旋律が心地よく響き、バッハ作曲「無伴奏チェロ組曲第3番よりプレリュード、アルマンド、サラバンド、ジーグ」ではチェロ独唱の美しい展開と共に板室の油蝉の鳴声が聴こえてきて大黒屋サロンならではの音楽世界を感じることができました。

ベートーヴェン作曲「チェロソナタ第3番より第1,第3楽章」はチェロとピアノの華やかな跳躍が印象的で充実した舞曲を、ピアソラ作曲「グラン・タンゴ」ではチェロの多彩な演奏技巧が織り込まれた重層的で味わい深い楽曲を披露していただきました。


アンコールではラフマニノフ作曲「ヴォカリーズ」や「アメイジンググレイス」を披露、胸にじんとくる音楽が奏でられました。

黒川正三さんと黒川文子さんによる優美な演奏を堪能できた音を楽しむ会となりました。     ご来場いただいた皆様ありがとうございました。



次回の音を楽しむ会は8月26日(木)、ヴァイオリン青木高志さんとピアノ弘中美枝子さんです。                                        どうぞお楽しみに!

2021年7月2日金曜日

2021年7月 久保田沙耶 「どめどないかたち -Work in progress forever- 」

 7月2日より大黒屋サロンにて、久保田沙耶さんの個展「とめどないかたち -Work in progress forever- 」を開催しております。

久保田さんは、日々の何気ない光景や人との出会いによって生まれる記憶と言葉、それらを組み合わせることで生まれる新しいイメージやかたちを作品の重要な要素としています。焦がしたトレーシングペーパーを何層も重ね合わせた平面作品や、遺物と装飾品を接合させた立体作品、さらには独自の装置を用いたインスタレーションなど数種類のメディアを使い分け、ときにはそれ等を掛け合わせることで生まれる作品制作を続けています。

代表的な展示に、個展「Material Witness」(大和日英基金)や、アートプロジェクト「漂流郵便局」(瀬戸内国際芸術祭2016)などがあります。久保田さんが様々な土地で滞在制作し現地で出会った人、事、土地の歴史などをきっかけに作品を制作されています。本展では展覧会前の2021年6月に約2週間板室に滞在して作品を制作されました。

板室で生活するうえで久保田さんは目の前に流れる那珂川や湧き出続ける温泉の流れに興味をもち、日々変わらず流れいく姿から本展のタイトル「とめどないかたち」を意識することになりました。

「いのちはいつも死んだもの、ちらばったものからやってくる。そしてひととき、ひとつの形として集まり道行きを歩んだのちに、ふたたび死んだものへと解体されていく。そのようなものたちを作り出してくる生命のめぐりを思っただけでも、この世界をあらわすことはずっとできそうにない。」

自然のものは常に変容の過程のなかにあり、我々もまた流れる時のなかを生きており変化の過程のなかにいます。作品を制作することは完成を目指しているようでそれは常に変容の過程なのかもしれません。今回、久保田さんはすでにある自身の作品に加筆を加えてあらたな作品として掲示することを選びました。本展は今回の滞在をきっかけに制作した作品26点と旧作4点によって構成されています。ぜひご高覧いただけたら幸いです。

会期 : 2021 年 7 月 2 日 (金) - 7 月 31 日 (土) 9:00 - 17:00
作家在廊予定日 : 7 月 2 , 3 , 10 , 31 日
* 7 月 2 日のみ12時から開館いたします。