9月30日より大黒屋サロンにて、五月女哲平さんの個展「入口のないかたち 」を開催しております。
大黒屋では初めての個展となる本展は、近年発表してきた作品群に新作を加えた全19点で構成されます。五月女は、1980年栃木県生まれ、東京造形大学美術学部絵画科卒業。初期は立体作品を手がけおりましたが、2009年頃からは絵画を中心に、時に立体や写真など織り交ぜながら作品を発表しています。変形キャンバスの使用や壁かけ以外で展示する方法、映像なども手掛けつつ、アクリルや写真、ガラス、シルクスクリーンなどの異なるメディウムの積層から作品の成立を試みるなど、絵画の物質的/概念的な解体と再構築を繰り返しながら、そこに自身がとらえた事象を介在させ、現代における絵画の在り方を模索しています。また2011年の東日本大震災後に、それまでの鮮やかな色彩を排した作品を発表して以降は、モノクロや黒を基調とし、モチーフを使うことをやめ絵画の要素を排除していくような作品を制作しています。
単にモノクロームな色でミニマルに描かれる単純で無機質な絵画のようであるが、実際にはさまざまな色(薄く溶いたアクリル絵の具)を塗り重ねた後、最後の層に無彩色を塗ることで、積層された色を覆い隠すように制作されています。そこには目に見えないものへ意識を向けさせるような作家の意図が感じ取れます。本展「入り口のないかたち」では、栃木県にある渡良瀬遊水地で撮影された写真と絵画を織り交ぜた作品「燃え湿るかたち」や、近年手がけている立体作品、最新の平面作品などで構成されています。近年の五月女の仕事が垣間見える展示となります。 この機会にご高覧いただけたら幸いです。