2023年9月29日金曜日

2023年10月 上野 友幸展

 板室温泉大黒屋では、9月29日より上野友幸展「Borrowing landscapes, Borrowing livesを開催しております。

上野さんは、東京芸術大学大学院先端芸術表 現修士課程修了後に渡独。ベルリン芸術大学にてマイスター課程を修了。現在もドイツ・ベルリンを拠点に活動しています。日常的に存在するものの形態やイメージと歴史的な彫刻的構造や絵画的イメージを対峙又はミックスさせることで、イメージや彫刻が認識に与える原理、特性について探求しています。


以下作家による展示に向けて、


「今から丁度3年前の2020年に板室温泉大黒屋の個展に招待され、私は活動場所のベルリンから板室へ行き、最初の二週間を裏山で過ごした。誰も通ることのない険しい道は10m毎に崩れている。もし、自分がこの崖から落ちても発見されないのではないかという心配と、自然との一体感をいつも同時に感じていた。コロナで病院で死ぬのとは違い、ここで死ねば土に還り、生命が循環する山の一部になれると思った。それは街中で感じる死の意識とは全く違う。枯れ枝を拾ったのはその枝もまた土に還ろうとしていて、その流れに触れたいと思ったからかもしれない。
 大量の枝を繋ぎ合わせた作品は朽ちていくことを暗示させると同時に、生命の連なりや、関係、繰り返される生命を感じとることも出来るだろう。森が一つ一つの木から構成されているように、その木も数億年前から受け継がれてきた命であるように、繰り返されるパターンにはこの世を構成する普遍性があると言える。枝を探して森を歩いていると、毎回自分が自然の一部になったような感覚になる。これまで素材をお店やオンラインで購入していたことに対し、この制作は自分の体を使って自然の中から発見・収集し、生きることと制作することが一致した感覚を覚えた。一般的に販売されている素材は制作しやすいように加工されている。クリエイティブなのはそれを利用する側ではなかったのかもしれない。自然の中に芸術を見出せたときに、芸術は生活の一部になり得るのではないだろうか。
 日本は古来から自然を信仰してきた。鎮守(ちんじゅ)の森とは境内やその周辺に、神殿や参道、拝所を囲むように設定・維持されている森林である。本来の神道の源流である古神道には、森林や森林に覆われた土地、山岳・巨石や海や河川など自然そのものが信仰の対象になっている。
 一方、西洋ではどうか。聖書をたどると、アブラハムは木の下に祭壇を築いたとある(創世記、13・18)。また、イエスは神の国を「からし種」に例えて説明し、それを「捲くと、成長してどんな野菜よりも大きくなり、葉の陰に空の鳥が巣を作れるほど大きな枝を張る」と説いた(マルコ、4・30-32)。このように、天上と至聖所、すなわち聖堂を樹木などの植物の比喩を介して関連付ける記述が散見する。樹木を模したゴシック教会が造られた所以である。
 その後私は土と人類の関係に興味を持ち、陶芸を始めた。土と砂の違いは、腐植物を含んでいるところである。人類のことを英語でhumanというが、腐植のことはhumusという。これらは語源が同じであり、旧約聖書の「土の塵からアダムを作り」という一節にも、東洋の「人は土から生まれ土に還る」という考えにも通じる。
 人もあらゆる生命も、生まれてからいろいろあって土に還る。そんな単純なことを難しくしないで表現することを大切に制作している。」 

                                                

上野友幸


 

 大黒屋では3年ぶり2回目の個展となる本展では、上野さんの代表的な作品でもある大理石プレートと写真を組み合わせたシリーズや、前回板室に滞在することで作品の発想の元になった木の枝のシリーズ、また近年手がけているいけばなのコラージュや陶芸作品など全22点を展示いたします。この機会に、ぜひご高覧いただけたら幸いです。


会期 : 2023 年 9月 29日 (金) - 10月 29 日 (日) 9:00 - 17:00
会期中の休館日:10月 17日,
18日

2023年9月26日火曜日

第235回 音を楽しむ会

9月の音を楽しむ会はボタンアコーディオン 伊藤浩子さん、津軽三味線 澤田春吟さんによる演奏会が行われました。




今回の演目は...


シャンソンメドレー

あいや節

雪が降る 〜パダン・パダン〜

美しき天然 〜サンジャンの私の恋人〜

リラの切符切り

あけぼの

ノスタル音頭

月の砂漠

桜の下でランデブー

もののけ姫

ゲゲゲの鬼太郎

ラ・クンパルシータ

ドンバン節 〜秋田音頭〜



滑らかで伸びやかさもありつつ、軽快なリズムも楽しめる、ボタンアコーディオン。


「もののけ姫」「ゲゲゲの鬼太郎」では、ボタンアコーディオンのノスタルジックな音色、津軽三味線の力強く深みのある音色が組み合わさり、より厳かで日本らしい曲へと変化しました。

真面目でユーモア、ノスタルジーを踏まえて、世界に一つしかない音楽を目指しているお二人。

お二人のあべこべだからこそ作り出せる「和洋折衷の音楽性」を通して、新しい音楽の在り方、魅力を発見した音を楽しむ会となりました。





次回の音を楽しむ会は10月26日(木)、ヴァイオリン 新村隆慶さんです。

どうぞお楽しみに!

2023年9月1日金曜日

2023年9月 光藤 佐展

 板室温泉大黒屋では9月1日より大黒屋サロンにて「光藤 佐 展」を開催しております。


 光藤さんは、1962年兵庫県生まれ。京都府立陶工職業訓練校専攻科卒業、十代の頃から職人として窯業に携わった後、京都精華大学美術学部にて西洋における素描技法を中心に学びました。卒業後語学留学も含めヨーロッパを旅して帰国後、京都の料亭の専用窯場で職人として働きます。その後独立し陶芸家として活動を始め、2004年に現在の拠点となる兵庫県朝来市に工房と穴窯を築き、粉引、刷毛目、白磁、絵唐津、赤絵、黒釉、三島手、安南手、瑠璃釉、イッチン等、様々な手法で多様な器を制作されています。



 懐石料理屋さんで働いた経験から、使いやすく盛り付けたときに美しい、食器 つくりを主に、花器、酒器、茶器、そして陶芸家として独立後から長年続けている書と短歌を嗜み古今東西の器への好奇心から、その創作は多彩な広がりを続けています。



 大黒屋では初めての個展となる本展では、お皿、鉢、飯碗、湯呑み、蕎麦猪口、汲み出し、片口、酒器など大小さまざまな日常のうつわと花器、茶碗などを展示いたしました。一部の作品を除いては、昔ながらの穴窯で制作されており1点1点違う表情のうつわが魅力です。

 また、書と短歌を嗜む光藤さんならではの墨彩画の作品も8点展示いたします。この機会にご高覧いただけたら幸いです。 


会期 : 2023 年 9 月 1 日 (金) - 9月 26 日 (火) 9:00 - 17:00
※展示は宿泊以外の方もご覧いただけます。