板室温泉 大黒屋
保養とアートの宿
2026年9月26日土曜日
第263回 音を楽しむ会
2026年9月4日金曜日
2026年9月 平井 明子展
板室温泉大黒屋では、英国・ロンドンを拠点に活動する陶芸家・平井明子の、日本では初となる個展を開催いたします。平井は日本で認知心理学を学んだ後に渡英。ウェストミンスター大学、ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズで陶芸を学び、2003 年よりロンドンを拠点に制作を続けています。本展では代表作「Moon Jar」を中心に植物の種の莢から着想した「Poppy Pod」、ジョルジョ・モランディの静物画を出発点とする「Morandi Bottles」の3 つのシリーズ、およそ70 点をご紹介します。



その考えは、自身の「Moon Jar」にもつながっています。窯の中で高温によって柔らかくなった土は、重力や上部の重みによって沈み、傾き、歪み、ときには完全に潰れてしまいます。平井は長年の制作を通して、土や釉薬が起こす化学的、物理的な変化をある程度予測しながらも、すべてを意図通りに制御するのではなく、素材が環境に応答することで生まれる変化を受け入れています。
焼成という環境をくぐり抜け、最終的に残った形や表情そのものを作品として受け入れる。そのため、一つひとつの「Moon Jar」には異なる傾きや歪み、表面の変化が現れます。
平井にとって「Moon Jar」は、古典的な月壺の形を再現するものではありません。制作の過程で壺が経験した出来事と、そこに残された痕跡そのものが、作品の見どころとなっています。


複数のボトルを並べることで、その配置によって形と形の間に異なる空間が生まれます。制作を続けるうちに、ボトルは次第に人間の身体を思わせる存在へと変化していきました。平井が暮らすロンドン・ハックニーは、さまざまな文化的背景を持つ人々が生活する地域です。街を歩く人々には、背の高さや体型だけでは説明できない多様なプロポーションがあり、そこに姿勢や動き、それぞれの個性が加わります。
平井はボトルをつくることを、「ろくろの上でハックニーの人々をさらっとデッサンしている感覚」に近いと語ります。一つひとつの形だけでなく、その組み合わせによって生まれる空間や影、そして人のような気配も、このシリーズを構成する要素となっています。


このたび、日本では初となる個展として作品を一堂にご紹介できることを嬉しく思います。
長年ロンドンで制作を続けてきた平井にとって、日本で作品を発表することは、海外での展示とはまた異なる特別な機会でもあります。私たちもこの展覧会を楽しみに準備してきました。
ぜひ作品を前に、それぞれの形や表情をゆっくりとご覧いただけましたら幸いです。
2026年8月26日水曜日
第262回 音を楽しむ会
8月の音を楽しむ会は大黒屋オペラによる演奏会でした。今回は「ヴェルディ 椿姫 名場面」をテーマに、通常2時間ほどかかるオペラを40分ほどに凝縮して演奏してくださいました。
〜出演者〜
ヴィオレッタ:和田奈美さん(ソプラノ)
アルフレード:城宏憲さん(テノール)
ピアノ:中橋健太郎左衛門さん
〜第1幕:華やかなパリの夜会〜
照明が落ちた会場に響く中橋さんの切ないピアノの音色。その静寂を破るように、城さんの甘く深い歌声と和田さんの澄み渡る歌声による『椿姫』の「乾杯の歌」が響き渡ります。二人の歌声は重なり合い、鮮やかな色彩で会場を満たしていきました。
〜第2幕:田舎での暮らしと悲劇の別れ〜
お互いを深く愛し合うからこその、ヴィオレッタの切ない決断とアルフレードの憤り。お二人の豊かな表現力で熱演された、アルフレードが彼女を侮辱する場面の鬼気迫る表情と熱気は、生演奏ならではの見応えにあふれていました。
〜第3幕:悲劇の結末〜
病床のヴィオレッタを一人にしたアルフレードの後悔と焦燥。対するヴィオレッタは、心配をかけまいと健気に明るく振る舞いながらも寂しさを滲ませます。二人で過ごす儚くも温かい最後の時間を、歌声や表情、照明の演出で存分に堪能できました。
劇場とは一味違う、演者との圧倒的な近さが生む臨場感に終始圧倒されっぱなしでした。40分という濃密な時間の中に『椿姫』のドラマが凝縮され、大黒屋の空間に響き渡る演者の息遣いや震えるほどの熱量が、ダイレクトに心に響く素晴らしい時間となりました。
次回は9月26日(土)クラヴィコード 内田輝さんによる演奏会です。
どうぞお楽しみに!
2026年7月31日金曜日
2026年8月 Daikokua Gallery Show
板室温泉大黒屋では、2026年7月31日(金)から8月31日(月)まで、「Daikokuya Gallery Show」を開催いたします。大黒屋では、「保養とアートの宿」をコンセプトに、1980年代後半より展覧会活動を続けています。旅館は、日々の暮らしから少し離れ、心と身体を整える場所です。温泉に浸かり、自然を眺め、料理を味わい、静かな時間を過ごす。その穏やかな時間の中で作品と出会うことによって、普段は見過ごしてしまう感覚や、知的な好奇心がゆっくりとひらかれていくことがあります。私たちは、そのような時間もまた「保養」の一つのかたちだと考えています。温泉や自然の中で、ふと作品と向き合い、その背景にある思想や制作への姿勢に触れることで、ものの見方や感じ方が少しだけ変わる。そのような静かな体験を、この宿で育んでいきたいと考えています。
私たちが考えるキュレーションとは、作品を通して作家の視点や思考をご紹介し、お客様と作家をつないでいくことだと思います。一度きりの展示ではなく、継続して作品をご紹介すること。その積み重ねによって、作品だけではなく、一人でも多くの方に作家を知っていただくこと。そして、作家の活動を長く見守りながら、その歩みをともにご紹介していくことも、大黒屋の大切な役割だと考えています。本展では、そのような展示活動の中から、これまで大黒屋で個展を開催してきた9名の現代美術作家による作品をご紹介いたします。
「Daikokuya Gallery Show」というタイトルには、大黒屋が長年続けてきたギャラリー活動 ─ 作家をご紹介し、その視点や作品との出会いを育みながら、人と作品、人と作家をつないできた歩み ─ を表しています。本展が、それぞれの作家を知り、その制作や活動へ興味を持っていただくきっかけとなれば幸いです。
旅館だからこそ、生まれる作品との出会いがあります。温泉に入り、食事をし、散策をしながら、ふと作品のことを思い返す。翌朝、もう一度作品の前に立ってみる。そんな時間の流れの中で、作家の視点が少しずつ自分の中に残り、作品との関係もゆっくりと深まっていく。そのような作品との出会い方もまた、この場所ならではの体験なのかもしれません。
夏の板室は、那須の自然が最も豊かな表情を見せる季節です。作品とともに、この土地ならではのゆっくりと流れる時間も味わっていただけましたら幸いです。どうぞご高覧ください。
出品作家
磯谷博史、上野友幸、加山幹子、菅木志雄、五月女哲平、田幡浩一、手塚愛子、八木夕菜、
山本雄基
2026年7月26日日曜日
第261回 音を楽しむ会
7月の音を楽しむ会はソプラノ 横井香奈さん、ピアノ 北村晶子さんによる演奏会でした。
今回の演目は...
1. ビゼー:歌劇「カルメン」より ハバネラ
2. カッチーニ: アヴェ・マリア
3. ヘンデル:歌劇「リナルド」より 私を泣かせてください
4. ピアノソロ
5. チレア:歌劇「アドリアナ・ルクルヴール」より 私は神の卑しい下僕です
6. 成田為三:浜辺の歌
7. 木下牧子:さびしいカシの木
8. F.ロウ:「マイ・フェア・レディ」より 一晩中踊り明かしたい
9. ピアノソロ
10. A.ピアソラ:オブリビオン
11. カールマン:喜歌劇「伯爵令嬢マリッツァ」より 聞こえるジプシーヴァイオリン









