2021年6月4日金曜日

2021年6月 新里明士 「まとりとる」

 6月4日より大黒屋サロンにて、新里明士さんの個展「まとりとる」を開催しております。

新里明士さんは、「光器(こうき)」と呼ぶ代表作品、ろくろで成形した白磁の生地に穴を開け、穴の部分に透明の釉薬をかけて焼成することで光を透過した文様が浮かび上がる「蛍手(ほたるで)」の技法を独自に発展させたものであり、うつわ自体がまるで光を帯びているかのような作品で国内外の注目を集めています。近年では2020年に日本陶磁協会賞を受賞されました。

2018年の個展に続き、2回目となる大黒屋での本展「まとりとる」は〈まる〉と〈とり〉のアナグラムであり、野鳥が多くやってくる板室の地の特徴をきっかけに展覧会を構成しております。敷地内の庭にも作品を配置し、野鳥をきっかけとして自然界と自身の作品がどのように共鳴するのかという実験的な展示も行なっています。また陶芸のフィールドで作品発表の機会が多い新里さんは常々やきものを台座から解放することとはどのようなことかを考えています。新たな試みとなる「まる」シリーズは作品を吊るすことによって、台座、または建物から引き離すことで作品の自律性、作品と外の関係性が浮かび上がり作品をひとつのオブジェとしての視点から作品と空間の関係性へと意識を向かわせます。本展覧会は、代表作「光器」と「マル」「Sphere」を組み合わせた作品制作の2面性が垣間見える展示となっております。この機会にぜひご高覧いただけましたら幸いです。


会期 : 2021 年 6 月 4 日(金) - 6 月 28 日(月) 9:00 - 17:00
作家在廊予定日 : 6 月 4 , 28 日
会期中の休館日 : 6 月 15 - 17 日
* 6 月 4, 18 日のみ12時から開館いたします。


2021年4月29日木曜日

2021年5月 荒木悠 「三泊五日」

4月29日より大黒屋サロンにて、美術家 荒木悠さんの個展「三泊五日」を開催しております。


荒木さんは世界各地での滞在制作を通して文化の伝播や異文化同士の出会い、その過程で生じる誤解や誤訳から生まれる可能性に強い関心を寄せています。特に近年手掛けている映像インスタレーションでは歴史上の出来事と空想との狭間にある物語を編み出して創造的に再現するような手法を展開、二つの領域のあいだを揺らぎ続けるような作品群は展覧会形式にとどまらず各国の映画祭でも上映されており国際的にも高い評価を得ています。


荒木さんは幼少期と中学から大学卒業までの間をアメリカで過ごし、その後帰国して現在は東京を拠点に活動されています。世界各地を行き来することが多い自身の原体験を元に、本展「三泊五日」という日付変更線を超えたときの移動で起こる現象に着目し、時間、時空、時差の認識のズレから展覧会を構成しています。日付変更線はよく見ると都合よく区切られていることに気づきますが、荒木さんはそんな人間らしい恣意的な要素に惹かれると言います。

"正座"と"星座"をかけた作品シリーズ「SEIZA」は(明治時代、海外の文化に対して日本の"正しい"座り方として恣意的に決められた)"正座"をしたヴィンテージの美人絵葉書に偶発的に付いた痕跡の点の上に修"正"液を付けて"星座"を模しており、荒木さんのユーモアに基づいた相対的な意味の多義性が感じられる作品となっています。


本展では諸外国での滞在制作や撮影など旅をしてきた際にご自身でコレクションした航空券を(リソグラフで拡大プリント)表装した作品、また様々な現地にて撮りためてきた膨大なスナップの中から厳選した写真作品など、これまで映像で表現することの多かった二つの領域の間を行ったりきたりするような「揺らぎ」を物質に置き換えることを試みています。

昨年からのコロナ禍の中、物理的な移動がままならなくなってしまった昨今ですが、板室の地にいながらも遠い国に想いを馳せ、展覧会を楽しんでいただければ幸いです。本展覧会期間中、特別に大黒屋から徒歩3分に併設する◯△□ギャラリーにて、近作の《The Last Ball》(2019)、 《密月旅行》(2020)の2作品を上映予定しております。また宿泊者の方に荒木さんのこれまでの映像作品を厳選してご覧いただけるQRコードを配布いたします。ご宿泊中に旧作もお楽しみいただけますのでこの機会にぜひご高覧ください。

会期 : 2021 年 4 月 29 日(木) - 5 月 31 日(月) 9:00 - 17:00
作家在廊予定日 : 4 月 29 日、5 月 1, 5 日
会期中の休館日 : 5 月 11 - 14 日
* 4 月 29 日、 5 月 15 日のみ12時から開館いたします。




2021年4月1日木曜日

2021年4月 羽生野亜展

  4月1日より大黒屋サロンにて、木工・家具作家 「羽生 野亜 展」 を開催しております。

羽生野亜さんは、多摩美術大学の立体デザイン科を卒業し、工業デザイナーとして勤務。その後、木工作家として独立しました。羽生さんの作品は一見、古木、流木を削り出したように感じますが、すべて新しい木を独自の技法で削り出し、化学染料や草木染め等で色を出してウレタン塗装で仕上げています。

ご自身が「木彫をやっているような感覚」と話す作品は、見方によっては石のようでもあり、古木のような深みある味わいは唯一無二です。約6年ぶりとなる大黒屋の個展ではソファテーブル、サイドテーブル、飾り棚、器など多くの作品が一同にご覧いただけます。この機会にぜひご高覧ください。

会期 : 2021 年 4 月 1 日(木) - 4 月 26 日(月) 9:00 - 17:00
作家在廊予定日 : 4 月 1 日
会期中の休館日 : 4 月 13 - 15 日
* 4 月 1 日、16 日のみ12時から開館いたします。



2021年3月26日金曜日

第211回 音を楽しむ会

 3月の音を楽しむ会は、テノール 上原正敏さんとピアノ 塚本敦子さんによる演奏会を行いました。今回は「温故知新」をテーマとして基本に立ち返り向き合った楽曲を披露していただきました。

ジョルダーニ作曲「愛しい人」、スカルラッティ作曲「菫(スミレ)」、ヘンデル作曲「オンバラマイフ(ラルゴ)」。明朗快活な歌とピアノのメロディーが会場に響きました。

美しい旋律の中に甘い苦しみと苦い喜びを表現したマルティーニ作曲「愛の喜び」、塚本さんのピアノソロでドビュッシー作曲「亜麻色の髪の乙女」を演奏していただきました、凛とした音が印象的でした。

ドゥランテ作曲「愛に満ちた処女よ」、グルック作曲「ああ私のやさしい熱情が」、ドゥランテ作曲「踊れ優しい娘よ」。リズミカルな調子で描かれる楽曲達は春風の温もりが感じられ心地よく耳に響きました。

アンコールでは「忘れな草」と「仰げば尊し(原曲はアメリカの歌)」を披露していただきました、胸に染み入るような言葉に感動しました。

上原さんと塚本さんによる演奏を十二分に堪能できた音を楽しむ会となりました。     ご来場いただいた皆様ありがとうございました。


2021年3月4日木曜日

2021年3月 杉田明彦展

  3月4日より大黒屋サロンにて、漆工 「杉田明彦 展」を開催しております。

石川県・金沢にて漆の器を中心に制作する漆工 杉田明彦さんは東京都出身、大学で文学部の哲学科に進みますが「手に職をつけたい」との思いから手打蕎麦店での修業後、2007年に輪島の塗師 赤木明登氏のもとで修行。6年間の修行の後2013年に独立しました。


杉田さんのうつわは、古い物がもつ質感、時間の佇まいから着想を得、自身の作品に反映させています。漆器は元来、お正月やハレの日などのお祝い事で使用されてきた為、『ハレの器、もてなしの器』としての役割を担ってきた感がありますが、杉田さんは日常で使用することをより想定して制作しています。マットな質感にすでに傷のような表情(古い土器のような)を持つ作品等にそれが見てとれます。また、作品を制作する上で現代の住居、生活の変化からも漆の受け入れ方も変わると言います。昔は現代のような電気、蛍光灯、LEDの明かりではなく、蝋燭の灯、自然光の微弱な明かりのなかでの生活が日常でした。その中で艶のある漆器が当時の生活のなかでは特別であり、マッチしていたのでしょう。しかし現代の電灯の明るさでは、その漆器は輝きすぎて浮いた存在に写ってしまうことや、テーブルと椅子の生活様式での目線の変化もあることなどから高台の高さ等にも工夫を凝らす制作を続けています。


漆の伝統を重んじながらも、現代の生活に違和感のなく使用できる漆器を考えて制作を続ける杉田さんの作品は、日本の和食料亭、またフランス料理の巨匠、アラン・デュカス氏のパリのレストラン等でも使用されています。和食でも洋食でも違和感なく、また普段使いから特別な日にもフラットに使えて、またそのまま飾っても楽しめる漆器だと思います。
本展ではお椀、飯椀、折敷、リム皿、盛り皿など和、洋どちらにも使える多様な器と、乾漆で作られた大型の器、そして漆の質感など、うつわでは表現できない平面、立体オブジェ作品など全300点以上展示いたします。この機会にぜひご高覧いただけたら幸いです。

会期:2021 年 3 月 4 日(木) - 3 月 29 日(月) 9:00 - 17:00
作家在廊予定日 : 3 月 4,5 日
会期中の休館日 : 3月 16 - 18 日