2019年6月29日土曜日

第195回 音を楽しむ会

6月の音を楽しむ会はピアノ中橋健太郎左衛門さん、ソプラノ鷲尾麻衣さん(アディーナ役)、テノール宮里直樹さん(ネモリーノ役)、バス三戸大久さん(ドゥルカマーラ役)、バリトン月野進さん(ベルコーレ役)による第11回大黒屋オペラ公演が行われました。曲目は大黒屋のためにアレンジされたドニゼッティ作曲「愛の妙薬」です。


第1幕、舞台は18世紀末スペインののどかな村。村の農場管理人にして聡明な美人アディーナは、好青年ネモリーノの求愛を断り続けているが、心の底では惹かれている。そこにカッコいい軍曹ベルコーレが来村、早速アディーナに求愛するがアディーナはこれもあしらう。ライバル登場に焦るネモリーノ。
♪ベルコーレの小アリアに続き3人の賑やかなアンサンブル。
♪続いてアディーナとネモリーノによる二重唱、二人の気持ちは違う方向を向いている。



曲間の演技シーンではセリフに日本語が使われており、物語が分かりやすく楽しく進行していきました。曲は基本的に原語ですが時々日本語が織り交ぜられたユーモア溢れる歌唱にお客様から歓声がドッと湧き上がって会場はとても微笑ましい雰囲気でした。


そこに、インチキ薬売りのドゥルカマーラが賑々しく登場。秘伝の惚れ薬(実はただの酒)をもっともらしく大宣伝。
♪喜劇的バスによる大アリア。素直なネモリーノはすっかり信じ込み大枚叩いて購入、
♪感謝するネモリーノとしてやったりのドゥルカマーラによる二重唱。
惚れ薬を早速飲み干すネモリーノ。ただし効果が現れるのは明日、とクギを刺されている。ネモリーノは普段と違い自信たっぷり。それを訝しがるアディーナ。
♪二人による二重唱に続けて軍曹ベルコーレが登場してアディーナに求婚、ネモリーノに対する当て付けでアディーナは承諾してしまう。結婚式は六日後の予定、しかし軍曹は急遽明日出発に変更となり結婚式は今日行うことになった!明日にならないと惚れ薬の効果は出ないので今日結婚されたら間に合わない、慌てるネモリーノ。今日だけは結婚をやめてくれと懇願するがムダである。
♪三者三様の重唱に続き、華麗なアンサンブルで第1幕フィナーレを飾る。


大黒屋サロンの空間を最大限に活用した歌い手達の演技は鑑賞者を物語の世界にどんどん引き込んでいくようでとても魅力的でした。また登場人物の心情を歌い方にきめ細かく反映されていて、これはすごい!と感激しました。


第2幕、アディーナと軍曹ベルコーレの結婚式。薬売りのドゥルカマーラはインチキくさい歌を披露。
♪即興で参加するアディーナとの二重唱。
今日中の結婚に大弱りのネモリーノはドゥルカマーラに相談するが更に一瓶飲めば効果は明日ではなく今すぐ現れると又もや騙されるが・・・もう金がない。悩んだ末に即金が得られるベルコーレの軍隊に入ることを決意する。
♪ネモリーノとベルコーレの二重唱。
かねてから重い病気だったネモリーノの伯父が死去。莫大な遺産が相続されるウワサが広がり、急にモテるようになる。惚れ薬が効いてきたと喜ぶネモリーノ。
♪イライラするアディーナ、インチキ薬が本当に効果を発揮して驚くドゥルカマーラによる三重唱。


場面はアディーナとドゥルカマーラに入れ替わる。ネモリーノは彼女の心を得る為に軍隊に入る決心をしたと真実を聞かされ感動する。
♪感動するアディーナとドゥルカマーラの二重唱。
ネモリーノただ一人、ひと雫の涙、アディーナを想って切々と歌う。
♪テノール屈指の名アリア。
アディーナ、はネモリーノを愛している本心に従って入隊契約書を取り戻した。喜び合い気持ちを確認する二人。
♪アディーナの本心であるネモリーノへの愛が歌われる名アリア。


終盤のネモリーノとアディーナの思い合う心情を深く表現したアリア、感動しました。序盤に披露したユーモア溢れる歌やセリフがより一層鮮やかに引き立てているようで、全体の構成についてもすごい!と感激しました。


ドゥルカマーラ、幸せな事の顛末は全て自分の薬の効用とまた口八丁手八丁で薬は売れる売れる。
♪大儲けで満足のドゥルカマーラは次の地へと旅立つ。幸せなアディーナとネモリーノ、結婚がウヤムヤになって立腹のベルコーレ、それぞれの思いを歌い全曲の幕となる。

日本語のセリフやアドリブが随所に鏤められたオペラの世界、物語の内容を深く理解できると共に登場人物の心情を感じながらオペラを楽しむことができた音を楽しむ会となりました。中橋さん率いる大黒屋オペラならではの魅力が満載でした!



次回の音を楽しむ会は7月26日(金)、ピアノ 伊東晶子さんです。
どうぞお楽しみに!

2019年6月4日火曜日

6月 拝宮和紙 中村功 展

6月1日より大黒屋サロンにて「拝宮和紙 中村功 展」が開催されております。


中村功さんは徳島県那賀町拝宮という標高600m、四国の南東部を流れる那賀川の支流に沿った自然豊かな山間地で拝宮和紙の伝統を守りながら制作を続けておられます。


中村さんは楮の繊維質な表情が出たパリッ、ピリッと破れる「寒(かん)」とした紙質にこだわりを持って制作されており、紙漉きをする時期は冬の間、上質な谷水と、原料は自身で栽培している楮【成長が遅く繊維が短いため紙にした時に密度が高い赤楮(アカソ)】を100%使用しています。拝宮の村の高齢化と過疎化問題、暖冬によって楮の成長が早まり赤楮本来の特徴が出ない、動物による自然被害など様々な障害を乗り越えて制作を続けてきたそうです。



江戸時代末期に最盛を迎え、先祖代々受け継いできた拝宮の紙漉き文化。村の小学校が廃校になると決まり、村の未来に危機感を感じた中村さんは27歳の時に紙漉きを始めました。未来への活路があると信じて村のため今日まで活動を続け、今や全国、海外にまで活動範囲を広げておられます。



自然に出た紙の曲がりや楮の繊維に接着力があるため紙がもつれた表情など「自分が全てに手をかけるのではなく紙から自然を引き出して拝宮和紙をどう表現できるか、ということを常々考えながら制作してきた」風土の変化により昔と同じ作り方はできない中で拝宮和紙の文化と実直に向き合い取り組み続けてきた中村さんの和紙からは心地よい手触りと温かみを感じることができます。


本展では伝統的な和紙、原紙、障子紙、紙布、大紙や、桜や柿渋などの草木染め、普段の生活にも使いやすい、便箋、封筒、懐紙、一閑張の花器、敷板、ライトスタンドなどを展示販売いたします。また、楮の皮など素材自体を大胆に活用したり紙を300枚重ねた平面作品など、手漉き和紙ならではのダイナミックな作品群もご覧いただけます。この機会にぜひお越しください。
展示は6月29日(土)まで開催、作家在廊日は6月29日です。
会期中の休館日:6月5,6, 18,19,20日