2025年3月26日水曜日

第248回 音を楽しむ会

3月の音を楽しむ会はテノール 猪村浩之さん、ピアノ 大坪由里さんの演奏会を行いました。2022年2月ぶり14回目のご出演です。




今回の演目は...


Piano×Tenor 
~Eterna Classica 永遠のクラシック音楽~

    ノクターン Op.15-2 嬰へ長調               ショパン作曲
    ノクターン 遺作 嬰ハ短調                ショパン作曲                       
    バラード第1番 作品23 ト短調               ショパン作曲
    チェコの民謡による演奏会用幻想曲         ベドジフ・スメタナ作曲

    オペラ≪愛の妙薬≫より ~人知れぬ涙~         ドニゼッティ作曲
    オペラ≪愛の妙薬≫より ~なんと彼女は美しい~     ドニゼッティ作曲
    オペラ≪トスカ≫より ~妙なる調和~           プッチーニ作曲
    オペラ≪ロミオとジュリエット≫より ~ああ、太陽よ昇れ~   グノー作曲

    ピアノのための《からたちの花》              山田耕筰作曲
    オペラ《カルメン》より 〜花の歌〜        ジョルジュ・ビゼー作曲
    ‘O sole mio              エドゥアルド・ディ・カプア作曲
  



「ピアノの詩人」と呼ばれたショパン。繊細で美しい旋律と革新的で複雑なピアノ技法で、詩はないのですが、感情表現ゆたかな曲を数多く作りました。


ショパン作曲「ノクターン Op.15-2 嬰へ長調」「ノクターン 遺作 嬰ハ短調」「バラード第1番 作品23 ト短調」。流麗な音色だけではなく、細かな音の粒まではっきり聞こえる程の繊細な音色、演奏姿からも伝わる音の喜怒哀楽など、大坪さんの多彩な表現力を楽しむことができました。


グノー作曲「オペラ≪ロミオとジュリエット≫より ~ああ、太陽よ昇れ~」では、ロミオの情熱的な想いをテノールで、ジュリエットの優しく寄り添うような想いをピアノで演奏。有名なオペラということもあり、登場人物の揺れ動く感情も含めてイメージしやすく、お二人の演奏を一つの物語として楽しむことができました。


アンコールは3曲。最後の「‘O sole mio」は会の終盤にも関わらず、猪村さんの伸びやかなアクートに会場から大きな拍手が起こりました。閉会後も口ずさむお客様がいる程、とても印象的な一曲となりました。


「音楽はタイムマシーンのようなもの」と仰られた大坪さん。曲調や演奏姿だけではなく、作者の生い立ち、作られた時代背景など、想いや記憶を辿ることも、音の楽しみ方の一つかもしれません。猪村さん、大坪さんの素晴らしい演奏だけではなく、新しい気づきもあった音を楽しむ会となりました。


今回は新幹線の事故による遅延で開演時間の変更等、猪村さま大坪さまをはじめご来場いただいたお客さまにご迷惑をお掛けいたしましたこと、また変更に対して快く受け入れていただきましたことにお詫びと感謝を申し上げます。




次回は4月26日(土)ソプラノ 西田真以さんによる演奏会です。
どうぞお楽しみに!

2025年3月7日金曜日

2025年3月 上野雄次展

 板室温泉大黒屋では3月7日より大黒屋サロンにて上野雄次展「花」を開催いたします。


上野雄次は自然との対話をテーマに、花そのものが持つ生命力や空間との関係性を探求する「花いけ」で知られています。彼の花いけは、単なる装飾としての花ではなく、自然の摂理や存在の本質に迫る試みであり、その美学は国内外で高く評価されています。

上野氏は、京都府生まれ鹿児島県出身。独学で花道を学び、国内外でのインスタレーションやパフォーマンス、個展を通じて独自の花いけ表現を確立してきました。伝統的な花道の枠にとらわれず、自然と人間の関係性、空間における花の存在意義を問い続け、現代的な感覚で花の美を再解釈しています。これまでに日本各地のギャラリーや文化施設での展示に加え、海外でも数々のプロジェクトを展開しています。



彼の花いけの哲学は、次のような言葉に集約されます。

「実に単純で限りなく美しい天地森羅万象の理にしたがい、 時に澄み渡る空のように晴れやかで真っ直ぐな、 時に暗く淀んだ淵に沈み込む、 実に厄介で曖昧な人の心に寄り添い続け、 その他全てのことから自由であることをここに宣言致します。」

この言葉は、彼の花いけが自然と人間の内面、そして宇宙の理(ことわり)と密接に結びついていることを物語っています。花をいけることは、自然との対話であり、人間の内面との対話でもあります。上野氏は、野に咲く花を探し、土地の生命力を感じさせる素材を用いて生命の上昇を表現し、破壊的で爆発的な創作物を通じて生命の力強い生の状態をトレースしてきました。植物から出発し、同じ自然界の存在である人間とつながる、そんな基本に忠実な花の哲学を、花いけでは大切にしています。



今回の展覧会では、大黒屋が所蔵する花器を中心に、上野氏ならではの花いけインスタレーションが展開されます。本展は、単なる静的な展示ではなく、会期中に定期的に展示構成を変え、訪れるたびに新たな発見があります。主に金曜日に構成が変わり、花や空間が生きていることを実感できる展示となるでしょう。特に、春の訪れがまだ遠い3月の板室で開催されることにより、花の持つ儚さと力強さ、そして空間に生まれる緊張感が一層際立ちます。本展は大黒屋にとっても初めての「花いけ」の展覧会となります。通常、花いけは短期間の展示や一時的なインスタレーションとして行われることが多い中、本展のように約3週間にわたる長期展示は非常に珍しい試みです。季節の移ろいとともに変化する花の表情、空間との対話をじっくりとご堪能いただける特別な機会となるでしょう。

また会期中の毎週日曜日には、上野氏自身によるデモンストレーション(公開花いけ)を開催いたします。このデモンストレーションは、花がいけられる瞬間そのものをみることができる貴重な機会です。上野氏が花を手に取り、素材の表情や空間のバランスを直感的に捉えながら、花が新たな命を得る瞬間を共有します。その瞬間、花のエネルギーと空間の息づかいを感じられます。会期中は上野氏自身も板室に在廊予定であり、直接その感性や花いけに対する哲学に触れる貴重な機会となります。展示は宿泊されながらご覧いただくことをお勧めしますが、宿泊されなくても展示はご覧いただけます。「花」と対話するひとときをぜひお楽しみいただけたら幸いです。


会期 : 2025年3月7日(金) - 3月30日 (日) 10:00 - 17:00

※会期中の毎日曜日10:00〜11:00にデモンストレーション(公開花いけ)を行います。

※3月7日、22日のみ13時から開館いたします。

※展示は宿泊以外の方もご覧いただけます。