2016年4月20日水曜日

西中千人 アートを語る会

西中千人 アートを語る会

 4月18日西中千人さんによるアートを語る会が行われました。
 大黒屋では、今回が初めての個展です。


西中さんの生い立ち

 生まれは和歌山県和歌山市。自然豊かな街で生まれ育ち、海までは、なんと約35秒。
 のんびりとした風土で18年間過ごしたのち、父の役に立てればと医学の道へ進むため、東京への生活に憧れもあり高校卒業後上京しました。ただ、注射が嫌いな西中さんは、医学部ではなく薬学部に入学。薬剤師免許取得し無事卒業。
 医学の道からなぜガラスに興味をもったのか?
 大学卒業間際、吹きガラス工房の見学がその後の転機となったそうです。
 それまで、ガラスのイメージは、車やビルなどに使われるような工業製品であり、冷たく画一的で硬いものであると思っていたのが、吹きガラス工房の見学を機にそのイメージが一変しました。熱せられたガラスが吹くことによって膨らみ既存のイメージとは全く違う姿を見た時「自分もやってみたい!」と、その不思議なガラスの魅力に魅せられた西中さんは、ガラスへの道を決心。その後、 ガラスの扱いに経験がないものの力仕事には自信のあった西中さんは、カガミクリスタルに直談判し入社、ガラスに関わる人生がはじまりました。


呼継(よびつぎ)

 今回の個展では作品「呼継」を中心に展示していただいており、そのことについてお話ししていただきました。
 呼継とは?
 呼継とは、割れてしまった器を漆、金などを使い修繕する技法で、主に陶器の茶碗などに用いられます。また金継とは違い一つの器の破片を組み合わせるのではなく、全く別の器の破片を持ち寄り、継ぐという日本には古くからある技法です。
 なぜ呼び継なのか?
 美術に興味をもった先生は「美」を勉強するため渡米、海外での経験から日本の文化、日本人の美意識を模索するようになります。その答えを見つけるために日本の文化、歴史を改めて勉強し直し、茶人の千利休、古田織部、侍にたどりつきます。茶の湯の先達が愛でた器に「呼継」がありました。
 「いま生きているという瞬間が強くもまた儚く美しい」それをヒビを通して表現しているのでは?と思い、西中さんは、呼継の茶碗に感銘を受けガラスの器に取り入れたそうです。
『自分なりの技術で自分なりの感覚でその「魂(日本人の美意識)」を「形の下にあるもの」を、表現しようとした』


水琴窟のガラスの庭の話
 
 「派手なことをせず、自己主張せず、場を見せる作品にしたかった」と今回の水琴窟の庭についてお話ししていただきました。
 それは、水琴窟のある「場」がそうさせ、渋さ、作為のなさ、主役じゃない作品の見せ方を心がけたそうです。



色の話

 様々な金属酸化物を使い、ガラスに色を与え、巧みに組み合わせている西中さんの作品。色によって扱いが違い、それを一つの作品にまとめるのはとても難しいとのこと。
 自身のペースではなく、素材のペースにあわせ、ガラスに無理のないよう、ガラスの気持ちになってものを作ることを意識し、コンピューターを駆使しコンマ1度まで温度管理に注意を払うそうです。
 ただ、様々な色を使えばいいというわけではなく、歌舞伎で見た着物の美しさなど感性で感じとったことを表現したいとお話ししていただきました。



 最後に◯△□に西中さんなりの言葉を当てはめていただきました。
 ◯△□は全宇宙を表していることと捉え、それぞれに「生」「気」「死」と書かれていました。「気というのは、東洋医学でいうとエネルギーの流れ、生命の流れを表している」「大概のことは気合いで乗り切ってきた」「生きることと滅びることを継なぐ気を重要なものとして捉えている」とお話しされ、その「気」は作品からも西中さんご本人からも伝わってくるアートを語る会でした。

西中千人さんの個展は4月29日までです。