2019年7月28日日曜日

第196回 音を楽しむ会

7月の音を楽しむ会はピアニスト伊東晶子さんによる演奏会が行われました。フランスでピアノを研鑽された伊東さんは今回で音を楽しむ会出演5回目、ナレーションでの出演は朗読ミュージカルでおなじみの森田克子さんでした。


曲の内容を詩にまとめたナレーションの後、演奏が始まる《ピアノと朗読によるドビュッシーの世界》。伊東さんの原点となるフランス音楽の魅力を凝縮したこの曲群は演奏会の大切な導入部分で、楽しく聴いてもらうことを意識して構成された演目からは伊東さんの温かみある人柄を感じました。

「水の反映」
”めくるめく光の中で音が躍る。水面を舞台に軽やかに、しなやかに、時には弾け、時には眠りを誘いつつ、華麗に舞う音の群れ。その煌めきは水に跳ね返りつつ、やがて静寂の中に溶けてゆく…”


「雨の庭」
”ドビュッシーの時代に活躍した印象派の画家、マネやモネの描いた絵画からは、光や影の揺らぎとともに、音楽が聴こえてくると言う人がいます。ではドビュッシーの音楽からは、どんな風景がみえてくるのでしょう。ピアノ曲集「版画」より「雨の庭」…。子供たちが楽しく遊んでいる庭に、アラ、大変!雨が…!”

「月の光」
”静けさが世界を包む。夜の帳の中で宝石のように煌めくのは、月から降り注ぐ、光の音符! 舞い降りる、光の天使!”


ノスタルジックなメロディーが六花の形を象りながら涼しげに会場に響き渡ったババジャニアン作曲「エレジー ”ハチャトゥリアンの思い出”」。
超絶技巧の速さでリズミカルに奏でられたモンサルバーチェ作曲「イヴェットのためのソナタ 第3楽章」にはきらきら星のテーマが編み込まれており音楽が層を成して心地よく聴き入ることができました。
「いろんな音楽に挑戦したい!」という伊東さんのアグレッシブで新しい一面を感じられたこの2曲は演奏会の中でも特に象徴的でした。



伊東さんが曲の物語を読んでから演奏したショパン「バラード第1番」は一音一音が演奏会に余韻を残していくように広がっていき、アンコールのショパン「ノクターン 遺作」では有名なメロディーを織り交ぜた静謐な音楽が伝わってきました。

伊東さんの想いがぎゅっと込められた演奏会は気づけばあっという間で、まだまだ聴いていたいと思わせる素晴らしい音を楽しむ会となりました。



次回の音を楽しむ会は8月26日(月)、笛 福原寛さんです。
どうぞお楽しみに!