2021年4月29日木曜日

2021年5月 荒木悠 「三泊五日」

4月29日より大黒屋サロンにて、美術家 荒木悠さんの個展「三泊五日」を開催しております。


荒木さんは世界各地での滞在制作を通して文化の伝播や異文化同士の出会い、その過程で生じる誤解や誤訳から生まれる可能性に強い関心を寄せています。特に近年手掛けている映像インスタレーションでは歴史上の出来事と空想との狭間にある物語を編み出して創造的に再現するような手法を展開、二つの領域のあいだを揺らぎ続けるような作品群は展覧会形式にとどまらず各国の映画祭でも上映されており国際的にも高い評価を得ています。


荒木さんは幼少期と中学から大学卒業までの間をアメリカで過ごし、その後帰国して現在は東京を拠点に活動されています。世界各地を行き来することが多い自身の原体験を元に、本展「三泊五日」という日付変更線を超えたときの移動で起こる現象に着目し、時間、時空、時差の認識のズレから展覧会を構成しています。日付変更線はよく見ると都合よく区切られていることに気づきますが、荒木さんはそんな人間らしい恣意的な要素に惹かれると言います。

"正座"と"星座"をかけた作品シリーズ「SEIZA」は(明治時代、海外の文化に対して日本の"正しい"座り方として恣意的に決められた)"正座"をしたヴィンテージの美人絵葉書に偶発的に付いた痕跡の点の上に修"正"液を付けて"星座"を模しており、荒木さんのユーモアに基づいた相対的な意味の多義性が感じられる作品となっています。


本展では諸外国での滞在制作や撮影など旅をしてきた際にご自身でコレクションした航空券を(リソグラフで拡大プリント)表装した作品、また様々な現地にて撮りためてきた膨大なスナップの中から厳選した写真作品など、これまで映像で表現することの多かった二つの領域の間を行ったりきたりするような「揺らぎ」を物質に置き換えることを試みています。

昨年からのコロナ禍の中、物理的な移動がままならなくなってしまった昨今ですが、板室の地にいながらも遠い国に想いを馳せ、展覧会を楽しんでいただければ幸いです。本展覧会期間中、特別に大黒屋から徒歩3分に併設する◯△□ギャラリーにて、近作の《The Last Ball》(2019)、 《密月旅行》(2020)の2作品を上映予定しております。また宿泊者の方に荒木さんのこれまでの映像作品を厳選してご覧いただけるQRコードを配布いたします。ご宿泊中に旧作もお楽しみいただけますのでこの機会にぜひご高覧ください。

会期 : 2021 年 4 月 29 日(木) - 5 月 31 日(月) 9:00 - 17:00
作家在廊予定日 : 4 月 29 日、5 月 1, 5 日
会期中の休館日 : 5 月 11 - 14 日
* 4 月 29 日、 5 月 15 日のみ12時から開館いたします。