2022年9月26日月曜日

第226回 音を楽しむ会

 9月の音を楽しむ会は当月の展示に合わせて盆栽研究家 川﨑仁美さんと塩津植物研究所 塩津丈洋さんによるトークイベントを行いました。

盆栽の歴史に触れながら「鉢植えと盆栽の違い」や「生活文化としての盆栽」についてお話して頂きました。

現代の生活空間でよく目にするのは盆栽ではなく「鉢植え」。

そもそも、鉢植えは「樹木のありのままの成長を楽しむ」もので、盆栽は「形を整え、理想の自然を楽しむ」ものと考えられます。

盆栽になるまでの過程として主に3つの過程があります。

            ①剪定:役割のない太い枝などを切る。

            ②針金掛け:日照条件を整える。

            ③鉢合わせ:正面を決める。樹形を決める。

そして、最後に高台などに乗せ、美しい自然の風景を楽しみます。

鉢の中で樹木を育てるという点から同じものと勘違いしてしまう、鉢植えと盆栽。2つの間にはとても繊細な作業があり、観る人を魅了させてくれます。

日本国内での盆栽の始まりは平安時代まで遡り、主に上流階級の貴族が楽しむものでした。鎌倉、室町と時代が変わるに連れ、武士の間にも広まります。


江戸時代になると唐から薬草学などが伝わり、大園芸ブームが起こりました。これまで、貴族や武士が楽しむものだった盆栽が、庶民にも広まり始めました。

そして、明治時代になると政界財界で流行し始めます。この時、開催されたウィーン万博で盆栽が世界に広まります。昭和になると盆栽の世界大会も開催されるようになりました。庶民の「生活文化」の一部であった盆栽も、いつしか、「芸術文化」の一部へと変化し、現代人にとって高貴な位置付けへと戻ってきました。

川﨑さんの話によりますと、スコットランド出身の植物学者であり、プラントハンターでもあるロバート・フォーチュンが幕末の江戸を訪れて、「小さい家に住みながらも、精神性は貴族並み」という言葉を残しているそうです。

江戸時代の人々にとって盆栽は日常生活の一部でした。小さな変化にも一喜一憂できることは、今の時代にとっても必要なことだと改めて感じました。

これまでの盆栽に対するイメージを大きく覆す、とても充実した1時間となりました。





次回の音を楽しむ会は10月26日、数学者 森田真生さんによる演奏会です。

どうぞお楽しみに!

※10月の音を楽しむ会は特別編です。