舞台上には沢山の楽器が並び、その場その時の空気感で即興的に音が紡がれていきます。
お二人がそれぞれ異なる楽器で、異なるリズムを刻み始めるのですが、いつしかそれらが重なり合い、一つの美しいメロディーへと昇華していくかのようでした。
演奏中には舞台から楽器が落ちるアクシデントもありましたが、その衝撃音や、拾ってもらった時の温かな笑い声すらも一つの「音」として、見事にその空間へ馴染んでいました。
「既になっている音が日常には溢れている」と仰られた宮坂さん。物から発せられる音だけでなく、人の息づかいや身体の動きなど、会場から生み出される全ての「音」を取り込んだパフォーマンスに、どこか不思議で心地よい感覚を味わうことができました。
また、お二人の演奏にはどこか懐かしさも漂います。子供の頃に食器を鳴らして親に叱られた記憶や、友人の部屋に集まって他愛もない会話に花を咲かせた記憶ーー。感じ方は人それぞれですが、「音」から呼び起こされる様々な「コト」が、すんなりと耳に溶け込んでいきます。
アンコールでは、拍子木を手に会場を練り歩く演出もありました。拍子木といえば「火の用心!」の夜回りや、伝統芸能の幕引きなどで使われるイメージが強いかもしれません。しかし、お二人が奏でる拍子木は不規則なリズムを刻み、四方から「チョン」と鳴り響くことで、特定の何かを連想させるというよりも、一つ「環境音」として楽しむことができました。
何かをイメージし、物語として音を追うのではなく、その瞬間の感情や空気感を素直に受け取ることで生まれる音の「化学反応」。そんな贅沢な響きを堪能できた、素敵な「音を楽しむ会」となりました。
次回は5月26日(火)チェロ 黒川正三さん、ピアノ 黒川文子さんによる演奏会です。
どうぞお楽しみに!



