板室温泉大黒屋では、3月1日より對木裕里展「日々の水やり」を開催いたします。
對木さんは神奈川県生まれ。2009年武蔵野美術大学彫刻学科卒業、11年京都市立芸術大学大学院彫刻専攻修了。2016年の「第11回大黒屋現代アート公募展」にて大賞を受賞し、2017年の個展以来、およそ7年ぶりの個展開催となります。對木裕里は石膏(せっこう)を中心に、さまざまな素材を取り入れた立体作品を制作しています。主に水粘土で原型を作り石膏で型取りをするという、少し手間のかかるプロセスで出来上がります。有機的で不可思議な形状の面白さにパステルカラーによる彩色を特徴とするその彫刻は、一見すると粘土を手で造形したままのかたちのようです。
作家は自身の制作について以下のように述べています。
「当たり前とされている景色の成り立ちに関心を寄せ、自分自身の身体感覚を頼りに物事の根源的な意味を問い直したいと考えています。私にとって、「彫刻をつくる」という行為は、布団で寝たり、洗濯物を畳んだり、食事の準備をするような日常の些細な行為の延長にあるものです。石膏や木材、紙、石、ブロンズ、時には野菜など日常を横断する様々な素材を組み合わせ、物事の意味が転換する瞬間について探求したいと考えています。」
本展覧会「日々の水やり」について
「家族がハーブの種を撒いた。大層なものではなく、ベランダでプランターや、ヨーグルトの空きパックを使って甲斐甲斐しく世話をしている。その間、大体私は子どもの世話をしているので、こっちにも手を割いてほしいとは思わないと言えばうそになるが、人にはそれぞれ自分の守るべき領域がある。あるいはそれを孤独と呼ぶ。日々の営みとは、切れ目のなさに意味がある。
イメージはいつも頭に転がっていて、庭の雑草のようによく生える。ひとつ摘んでプランターに植え替えて水をあげてみる。意図的に作られた空き地には何も実らないかもしれないが、絶対的に必要なのだ。頑固に守った不自然な土地。
生活とは積んでは崩しの連続だが、そういった頑なな営みにしか生み出せないドライブがある。生活は計り知れなく、どこにでもある。
制作は生活の中にあり、生活は制作の中に宿る、私たちはそれぞれの孤独を育てていくしかない。
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