2024年8月30日金曜日

2024年9月 若杉集展

板室温泉大黒屋では8月30日より大黒屋サロンにて「若杉集 展」を開催しております。


若杉さんは、益子の原土を用いて制作される急須でその名を広く知られ、今回の個展は大黒屋での展示としては約8年ぶり、4回目の開催となります。1977年、栃木県益子町にて独立・築窯し、1987年頃から焼締め急須を中心とした制作活動を本格的に開始しました。彼の作品は、益子の陶土に対する深いこだわりと探求心によって生まれたものです。自らの足で原土を探し、職人から土作りの技術を学びながら益子産の粘土を100パーセント使用して、緻密で美しい焼締め急須を作り上げてきました。益子の陶土は、砂が多く肌理が粗いため粘りが少なく、焼締め急須には最も不向きであるとされてきました。しかし、若杉さんはその挑戦を恐れず、益子の土の新たな可能性を切り拓くべく尽力してきました。その功績は高く評価され、第5回益子国際陶芸展では大賞にあたる濱田庄司賞を受賞されています。



代表的な作品である急須は、異なる種類の益子の原土を用いて制作されています。原土の特性はもちろん、土作りの工程によっても作品の肌合いに独特の表情が生まれます。急須には、一つ一つ異なる創意工夫が込められており、益子の粘土が持つ特徴の砂目で鉄分を含む二級品とされるものを巧みに活かしています。原土を自ら手堀りし、水簸(すいひ)を繰り返して土の欠点を克服し、優れた質の粘土を精製しています。その結果、釉薬を一切使用せずに焼き締められた作品は、若杉さんの卓越した技術が際立つ仕上がりとなっています。

現在、益子焼といえども、益子の土を100%使用した陶器は非常に稀少です。若杉さんの作品名に「日陰○○土」、「川又○○土」、「吉沢水簸土」など職人さんや固有名が必ず記載されています。それには粘土を作る職人さんへの敬意の表現だと言います。



今展覧会では、益子の原土のこだわりについても紹介できるよう、長年にわたり若杉さんの作品をコレクションし続けてきた齋藤史則さんのご協力のもと、益子の原土とこれまでの代表作も合わせて展示いたします。急須をはじめ、酒器や茶器など約100点にわたる作品が展示される予定です。この展覧会を通じて、若杉集さんが手掛ける益子の土への深い魅力と、彼の技術の粋を存分にご堪能いただけたら幸いです。


会期 : 2024 年 8 月 30 日 (金) - 9月 30 日 (月) 9:00 - 17:00
※8月30日のみ13時から開館いたします。
※展示は宿泊以外の方もご覧いただけます。