2016年2月22日月曜日

今井貴広 アートを語る会

 2月18日今井貴広さんのアートを語る会が行われました。
今井さんは2012年から2015年の3年間、大黒屋に社員として務め、退社後、今回の展覧会に向けて制作をしてきました。
 そんな、大黒屋とも関わりの深い今井さんが、どんなことを語られるのでしょうか?


今回の展示に向けて

 大黒屋の社員だった今井さん。大黒屋という「場」で働くことを通して、 経験、状況性の観察、大黒屋の「場」を理解した「作品単体にならない、なんらかの関係性をもった作品 展示」を心がけたそうです。
 「大黒屋は自然豊かな場所にあり、その自然の恵みを活用しながら経営活動しているところで、人と自然が無理のない形で共存している」「自然と人との有機的なやりとりが垣間見える場所」と語られました。
 それは、今井さんの創造活動において大事な要素で、いままでの作品においても「自然」と「文明」そしてそのあり方や「関係性」に興味があったそうです。今回、展示されている作品もそういった「自然」と「文明」との関係性をコンセプトにその関係の「間」の「グレーゾーン」を表現した作品になっています。



今井さんの生い立ちから

 今井さんが生まれ育ったのは、神奈川県平塚市。都市部から少し離れた郊外でした。ただ、板室のように周りが自然に囲まれた場所というわけではなく、少し歩けばコンビニやスーパーなどもある、都市の中心でもなければ、木々や山々だけに囲まれているわけでもない、ある面で中途半端な場所に住んでいたとおっしゃっておりました。そういった生活環境の中で育ってきたことが自身の作品の「自然と文明のグレーゾーン」という中庸性に大きく関わっているそうです。


 ものの構造や裏側に興味がある今井さん、そのきっかけにお祖父様の存在がありました。
建具屋であるお祖父様のつくったお神輿の一部の模型で、小さい頃に分解したりして遊んだそうです。
 他にも、ご実家が、農家ということも制作に大きく関わっていると話されていました。
農業を含む農林水産業という第一次産業は、古くからある職業です。環境と人とのやりとりが現代も変わらず続いています。そういった普遍的なプロセスが、作品の成立の仕方とも近い部分があるのではないか?と考えを持つようになったそうです。
 
大黒屋へ そしてこれから

 大黒屋で働いた理由に、美術以外の経験の必要性を感じていたからだと言います。
 世に出ている作家の中には、特異な前職をもった人もいます。彼らの美術固有の問題に留まらない表現に感銘を受けたそうです。


「芸術家とはいえ、社会に生きる一人間という自覚をもって自らの作品、制作を『生き方』と考えてもいいのかもしれない」と今井さんは言います。

 現代に生きる個人が自然と文明との関わり合いの中で、いかに存在し生きていくのか。急速的に発展し続ける現代社会において、重要なテーマでもあるように思います。

 今井さんのインタビューがブログ内にアップしてあります。そちらも合わせてご覧ください。

第1回 作品の成立

http://itamuro-daikokuya.blogspot.jp/2016/02/blog-post_8.html

第2回「人間、自然、文明ー制作の根底にあるもの」

第3回「大黒屋「Primal Contact」展とこれから」



 今井貴広さんの展覧会は2月28日までです。ぜひご来館ください。