2016年5月26日木曜日

第158回 音を楽しむ会

今回はボタンアコーディオンの伊藤浩子さんです。共演は同じくボタンアコーディオンの津花幸 嗣さんです。伊藤さんは毎年音を楽しむ会に出演され、津花さんも2年ぶりの出演となります。


ボタンアコーディオンはアコーディオンの原点とも言われています。左右にボタンが並んでおり、左で伴奏し、右でメロディーを弾きます。伊藤さんのアコーディオンは重さが11kg、津花さんのは16kgもあるそうです。
2人が共演することによって複雑なハーモニーが生まれ、のびやかな音と軽快なリズムで私達を楽しませてくれます。


伊藤さんは小学生のときに弾いたアコーディオンの音が忘れられず、ピアノを勉強した後、フランスに渡りアコーディオンを学び、現在もパリに住んでいらっしゃいます。
津花さんは生まれたときから身近にアコーディオンがある環境で育ち、ドイツに留学、現在は日本で活動されています。


この2人のデュオのは25年前、伊藤さんがフランスでアコーディオンの先生と一緒に演奏していた形と同じだそうです。プログラムの中には伊藤さんの尊敬するジョエ・ロッシ先生が他界されたときに飛行機の中で書いた「ジョエ先生へ」や、大切な人を失った哀しみから生まれたレクイエム「慕情」がありました。雨が降っていて、切ない気持ちに暮れる情景が見えるようでした。


フランスに渡った初期から孤独と戦いながら、制作し続けている刺繍の展示もありました。華やかな演奏の舞台に立つ伊藤さんですが、刺繍と共に歩んできたところは大きかったのではないでしょうか。



次回の音を楽しむ会は6月26日(日)、笛の福原寛さんです。お楽しみに!

2016年5月21日土曜日

緑と魚と水と鳥

晴天が続き、初夏の気配を感じますこの頃、板室では新緑の最盛期を迎えています。
山の上まで緑に包まれ、夜には濃い森の気配が漂う。

標高約500mの板室では、昔から山の緑と水源から流れ込む澄んだ水、
そして渓流を行き交う魚や鳥と共に暮らしています。



夏草が現れ始めた河原を歩くと、パッと檸檬色の鳥が飛び立ちます。
川辺をなわばりにしているキセキレイです。




カメラではとらえきれませんが、近寄るとこんな姿をしています。
鮮やかな色合いは散歩中の心を軽やかにしてくれます。


大黒屋では長らく野鳥とともに季節を迎えてきました。
赤い巣箱から旅たった雛がみられることもしばしば。


3月から釣りが解禁された川では山女魚、岩魚、鰍(かじか)の姿が。
釣り人も多く訪れています。

新緑や たましひぬれて 魚あさる 渡辺水巴

豊かな森と豊かな水、そこに集まる動物たちは板室の風景の中に在り、
ふとした瞬間に目に飛び込んできます。

お泊りの時間の間に、そんな瞬間がたくさん訪れますように…




「風の耕路」の梅の木の実が大きくなってきました。
 今年も美味しい梅酒になってくれるでしょう。



5分ほど歩くと蛍の育つ沢に着きます。
蛍の見頃は6月から。夏も楽しみです。


2016年5月19日木曜日

加藤委 アートを語る会

 5月18日、加藤委さんによるアートを語る会が行われました。

 大黒屋では、委(つぶさ)さんの器は酒器をはじめ館内でも使わせていただいております。また去年12月に行われた酒器展にも出品していただいており、関わりの深い委さんの器ですが、大黒屋での個展は今回が初めてです。


 岐阜県多治見市出身の委さん。多治見は、美濃焼でも知られる窯業地です。しかし、委さんの作品はそういった伝統的な作風とは違い、青白磁を用いた独自の表現をされている方です。日本だけでなく海外でも高く評価されている委さん、どんなことを語られるのでしょうか。


 委さんが生まれ育ったのは、志野、織部、黄瀬戸、引き出し黒など、いわゆる茶道具にもよく見られる美濃焼の産地、多治見。
 物心ついた時には傍にやきものがあり、自然と陶芸の道に進んでいった委さん。家系は17代続く窯元の分家で生まれ育ちました。ただ、それらを自己の表現としてそのまま引き継ぐことに疑問を抱いた委さんは、独自の表現を模索するようになります。
 

 陶芸の技術を製陶所で学び、大きさが決められた湯のみを1日に500個、日々作り続けていたそうです。そんな仕事の合間、バイク好きの委さんは多治見を離れよく旅に出かけ、様々な人と出会いの中である不安を抱きます。
 「この生活を続けて自分が自分になれるのか?」
 「陶芸」という型にとらわれない自己の表現とはなんだろうか?「陶芸家」と言われることに違和感を持ち、伝統としてのやきものではなく、ひとりの表現者としてのやきものを考えるようになります。新しい自分を見出すために5年間の製陶所勤務をやめ、個人作家として活動がはじまります。


 自己の表現を模索している中、ある土との出会いが転機となります。
 21歳の時、たまたま友人の手伝いで訪れた粘土工場、そこで触れた真っ白な磁土。それは、今もなお使い続けている、ニュージーランド産の土との出会いでした。磁土は知っていたけれども、磁器にはあまり興味がなく、民芸や伝統的なものに触れてきた委さんにとって冷たいというマイナスな印象しかなかったそうです。
 その出会いを機に、それまで持っていた陶芸に対しての概念が払拭され、目の前のそのものを、その素材を扱ってみたいという気持ちに掻き立てられ、後にその土を扱うようになります。
 しかし、その土では、できていた湯のみや壺など、ほとんど思うように形にならなかったそうです。ねばりがなく、いままでのろくろが通じない、土ではあるものの、全くの別物で試行錯誤の連続でした。
 それでもあきらめずにその土を使い続け、自身の思う形ではなく、素材と対話しながら、そのものが自分に浸透していくような感覚、ものと自分が一体になった時に初めて作品になったとお話しされました。
 
 その土との出会いから、現在もなお使い続け、型にとらわれない加藤委さん独自の表現、世界観が今回の大黒屋での展示でも展開されています。



 最後に委さんに普段考えていることを◯△⬜︎に言葉を入れていただきました。
 ◯感 △創 ⬜︎堀


 大黒屋での個展は5月30日までです。ぜひご来館ください。

2016年5月5日木曜日

新緑の候と器の楽しみ

桜が散り、代わりに色とりどりの緑が萌え出ずる新緑の季節になりました。
紅葉の頃山を錦と例えますが、今は「緑の錦」という言葉がぴったりです。





降り注ぐ光とマイナスイオンを浴びると心身ともに爽やかな心地になれます。
そんな初夏に向かう季節に、現在開催中の加藤委さんの器のしつらえを
ご紹介いたします。

加藤さんの作品は一見どれも個性的な形で料理の盛り付けに緊張感がありますが、
お料理と合わせてみると不思議とお互いが引き立て合い食卓にリズムが生まれます。

大黒屋の初夏のお料理「夏野菜の土佐酢ジュレ掛け」

 青白磁の器は涼しい趣があるのでもちこれからの冷たい料理にもよく合います。

 シャープな造形が氷のようで涼しさを引き立てます。

加藤委さんの展示は5月いっぱい続きます。
新緑と合わせ、ぜひお運び下さいませ。

2016年5月1日日曜日

5月 加藤委展

本日から大黒屋サロンにて加藤委展が始まりました。

加藤さんは岐阜県多治見に窯をかまえ、作陶を行っています。
大黒屋では初の個展となります。




桃山時代から続く陶芸家の家系に生まれ、多治見という地域の中で焼き物の文化と
共に自然と生きてきたという加藤さん。焼き物以外の道を模索した時もありましたが
最後は根底にあった作陶の道へと入ったそうです。


加藤さんの抱いてきた感性はニュージーランドの土によって実現したといいます。
鋭利で豪放な勢いをもち、それでいて磁器のはかなさ、繊細さも併せ持つ造形は
海外でも高い評価を得ています。





本展ではサロン全体に配置された大型の作品や壁掛けの作品に加えて日常で使う
焼き物も出品されています。



扱う人により壁掛けの陶板も器に変わります。
ぜひお手に取り、量感や釉薬の鮮やかさなどもご覧いただければ幸いです。
会場の写真はFacebookでもたくさん公開しております。
大黒屋公式Facebook


加藤さんのアーティストトークは5月18日20:00から大黒屋サロンにて行います。
この機会にぜひお越しくださいませ。