2017年2月28日火曜日

第167回 音を楽しむ会

 今回の音を楽しむ会は、大黒屋では初めての試みとなる「数学の演奏会」でした。これまでは毎月歌手や楽器の演奏者の方が出演していましたが、今回は数学をテーマとした著作・講演活動を行う独立研究者の森田真生さんのお話です。


 森田さんが幼少期に数学に興味を持ったきっかけや、数学の原点といわれている歴史上の話から始まります。日本とヨーロッパの数学教育の違いを「つるかめ算」と連立方程式を例に話してくださいました。時代、地域ごとに数学にも美意識や理想が違うといいます。


 森田さんが憧れる日本の数学者、岡潔の話も出てきます。数学から人間の情緒の仕組みを編み出し、思いやり支え合って生きる大切さも感じさせられました。



 最初は「数学」と聞くと苦手意識を持っているお客様も多くいました。皆さん緊張した様子で会場にいらっしゃいましたが、時折笑い声や拍手を上げて楽しめたようです。

「音楽を聞くように楽しく聞くことができた」
「数学の面白さに初めて気づいた」
「人の生き方に繋がるところがあり、今まで知らなかった世界に触れることができた」

お客様から様々な喜びの声が寄せられました。





次回の音を楽しむ会は3月26日(日)、テノールの上原正敏さんです。
お楽しみに!

2017年2月21日火曜日

「音」の楽しみいろいろ

毎月26日に開催しております音を楽しむ会。

「音」にはさまざまな種類の楽しみがあります。

ヴァイオリンやフルートなどの洋楽、三味線や篠笛、鼓など邦楽。
テノールやソプラノなどの声楽の演奏。これまでもさまざまな演奏者の方が
大黒屋サロンで名演奏を披露してくださいました。


ヴァイオリン青木高志さん、ヴィオラ黒川正三さんの共演

三味線の佐藤通弘、通芳さん親子の演奏


テノール猪村浩之さんの歌唱

また、2015年から毎年開催していますオペラの夕。
オペラの名曲からとっておきのシーンを抜粋し、出演者間近という特等席で
音楽とともに迫力ある演技と物語を楽しむ貴重な機会となっています。


プッチーニのオペラ「トスカ」 ソプラノ林真悠美さん、テノール佐々木洋平さん、
バリトン高橋正典さんの熱演

2012年には古今亭志ん輔さんによる落語の講演、2011年には鼓の藤舎呂英さん、
笛の福原寛さん、日本舞踊の花柳美輝風さんによる音楽と舞の講演など
目と耳で楽しむ音の演目も多彩に取り入れております。

桜を背景に舞う花柳美輝風さん


また、「声」という音を楽しんだことはありますか?
今月2月は著書「数学する身体」や「大人のための数学講座」で知られ、
第15回小林秀雄賞を受賞した独立研究者森田真生さんの「数学の演奏会」を行います。


大黒屋での森田真生さん

楽譜が読めなくても演奏を聴いたら音楽を感じられるように、数学の世界にも
論文や数式が読めなくても数学のこころに触れることのできるような
「演奏」があり得ると考え、各地で演奏会を開いてきた森田さん。
声という「音」により、どのような数学の世界を楽しむことができるのか楽しみです。

過去には奈良薬師寺執事である大谷徹奘さんの「法話」の講演もありました。
大黒屋ではこれからも新しい「音」の楽しみ方を提案してまいります。

3月はテノールの上原正敏さん、
4月はテノールの猪村浩之さんとピアノの大坪由里さん、
5月はピアノの伊東晶子さん。


26日、音を楽しむ会をどうぞお楽しみに。

2017年2月19日日曜日

山本雄基 アートを語る会

 現在サロン展示中の山本雄基さんによるアートを語る会が行われました。 
大黒屋での個展は4回目であり、山本さんのファンであるお客様もいらっしゃいました。今回は芸術や絵画の魅力の深いところについて語ってくださいました。


 社会という枠の中で生きるということは通常であれば、多くの物事や人に合わせて普遍的に枠の内側に入ろうとすることがほとんどです。芸術はその社会の枠の端に立ち、外側の方を中に、普遍的なものの幅を広げる役割をしているのではないか、と山本さん。


 絵画の魅力とは何か。現代ではスマートフォンなどでもカメラを使えばボタン1つで画像を切り取ることができます。それに対して絵画は筆で一つひとつ描き、キャンバスや身体の大きさによって描くものも変わり、作者の震えや力なども大きく影響してきます。これによって絵画の中には独自の空間と時間の要素が加わり、見ている以上のものを感じ取ることができるのだと言います。


 山本さんが制作する上でよく出てくるキーワードは
「見える・見えない」 「間」 「グレーゾーン」 「曖昧さ」

「見える」とは不透明ではっきりとした色のついている円、対して「見えない」とは、透明にくり抜いた円のことを指しているそうで、更にこれらの間に透明なアクリル絵具の層を重ねることによって円を複雑に交差させています。この工程により画面に奥行の軸ができるのだと仰っておりました。
 また、明るくやわらかな色調で肯定的なヴィジュアルを入口にした絵には、誰もが入りやすい雰囲気があります。見ている人がこの世界に入り込むことで、今自分がどこにいるのかふわふわした感覚が生まれるのだそうです。この感覚が空間や時間を感じるということではないでしょうか。


 ぜひ、生で作品をご覧になってこの不思議で気持ちのいいバランスを味わってみてください。
 山本雄基展は2月27日(月)までです。

2017年2月1日水曜日

2月 山本雄基展

本日より大黒屋サロンにて4回目となる第5回大黒屋現代アート公募展
大賞受賞者の山本雄基さんの個展が始まりました。



山本雄基さんは2011年の大黒屋初個展より梅の館廊下や1階客室、北の館しえん
ギャラリーでの常設展示など大黒屋の風景に欠かせない作家です。
近年では拠点である北海道のほかドイツや台北、国際的なアートフェアなど国境を
超えて活動しています。



普遍的かつ根源的なモチーフである円を透明のアクリル絵の具の層と色のある層で
重ねることで見えるものと見えないものを多重的に作用させる作品を一貫して制作
しています。円と円、層と層の間に行き交う関係性が1つの価値観に回収されない
曖昧さや相対性を内包しています。



本展ではいままでにない実験的な試みを行った作品が多く出品されています。
ある程度円と円の間の約束や構図をスケッチにしていた今までの方法から
その時の直感的な思いつきや感覚、自分ではコントロールできないような
仕組みを用いて円を置いていくことを加えているそうです。



定められた関係性とランダム・感覚的な指向性が絡まり合う新作。
予測できない絵に導かれるよう、どんどん厚く12層にもなった作品もあります。
メタリックカラーやグラデーションなど技術的な挑戦による空間の変化も試している
とのこと。



1枚1枚、とらえきれない複雑な要素を探るような作品が一堂に会しました。
2月18日 20:00〜アートを語る会にて山本さん自身に制作のことをお聞きすることの
できる貴重な機会もあります。
ぜひ御運び下さいませ。

公式Facebookにてより多くの写真をアップしております。
大黒屋公式Facebook

2015年の個展時のロングインタビューはこちら
山本雄基インタビュー 第1回 作品の構造について