2019年2月27日水曜日

第191回 音を楽しむ会

2月の音を楽しむ会はテノール猪村浩之さんとピアノ大坪由里さんによる演奏会で、暖かい日が続く板室にて春をテーマにした演目を披露していただきました。


大坪さんのピアノソロ1曲目ヨゼフ・スク作曲「春」は5つのパートからなる組曲です。序盤の旋律からは温かで朗らかな大地や爽やかな風を感じました。中盤は曇天を思わせる重低音が鳴り響き、終盤へ向かうにつれ晴天のように明るく軽やかなメロディーへと昇華していきました。


生死がテーマとなっているベドジフ・スメタナ作曲「マクベスと魔女たち」、亡くなられたお父様への思いを込めた演奏から迫真の音色が響いて心が惹き込まれました。


猪村さんはレオンカヴァッロ作曲「Lasciati amar ~あなたが愛されますように~」とクルティス作曲「忘れな草」を披露。伸びやかな歌声で歌い上げ、会場から大きな拍手が沸き起こりました。


竹内まりや作曲「いのちの歌」は静かで優しい歌声が心に沁み渡り、お客様と一緒に大きな声で歌った「早春賦」は会場が活気に満たされて大きな一体感が生まれました。


エディットピアフ作詞「バラ色の人生」は猪村さんがお客様に手を差しのべて叙情的に熱く歌ってお客様から投げキッスが飛ぶ場面もあり会場は大いに盛り上がっていました。


最後はシークレット・ガーデン作曲「ユーレイズミーアップ」。猪村さんが最初に日本語で歌詞を朗読してから歌い始めました。脳裏の記憶に響くように頭がジーンとなり、心臓の鼓動のようにピアノと歌声が鳴り合い、二人の思いの波動が会場へと広がっていきました。命の煌めきを表現したとても感動的な1曲でした。

アンコールでは猪村さんが上着をとって颯爽とステージに再登場後「とても君を愛してる」を披露、曲のメロディーと袖を捲って爽やかに歌う猪村さんの雰囲気がとてもマッチしていました。心が温かくなるような音色がとても印象的で春の息吹を感じた素晴らしい音を楽しむ会となりました。



次回の音を楽しむ会は3月26日(火)、ヴァイオリンの青木高志さんです。
どうぞお楽しみに!

2019年2月2日土曜日

2月 今井貴広+宮澤有斗展

2月1日より大黒屋サロンにて今井貴広+宮澤有斗展が始まりました。



今井さんは神奈川県出身、東京造形大学造形学部卒、大黒屋で3年勤めた後、現在は農業を営みながら美術作家として活動しています。

宮澤さんは栃木県益子町出身、岩手大学教育学部卒、大黒屋で4年間勤めた後、生まれ育った益子にもどり作陶しています。


今井さんは都市近郊(都市部と地方の間の環境)で生まれ育ち、文明と自然の関係性についてこれまで考えてきたといいます。作品は文明的な材料を用いて自然のコントロールできないことや意識できないものをモノに置き換えて表現しているといいます。



窓などに使われる文明的な素材としてのガラスを用いたこの作品は大黒屋の特徴的な黄土の壁を見せるために作ったとのこと、作品を観て外の庭(自然)へ意識を流す役目があるそうです。文明的なガラスを意図的に割ることで自然のコントロールできない現象を起こして文明の領域にあるガラスを自然の領域へ移したといいます。ガラスの割れ目に貼られているテープをよく見ると真っ直ぐな部分(目的に見合った合理的要素)とビリビリに破れている部分(目的を無くした野生的要素)があります。


宮澤さんは陶芸と染色をされているご両親のもと、自然の素材が身の回りに多くある環境で生まれ育ちました。今回の展示では素の色、素の形、素の自分を表現し、自分を見つめる場にしたいと考え作陶してきたといいます。


手捻りと轆轤成形を使い分けながら白磁や銀彩、鉄釉を使った黒の器、磁器と陶器の間の絶妙なバランス感覚の白器、父宮澤章の技法を受け継いだ刻陶シリーズなど多様な器があります。またこれまでの展覧会などで見せてこなかったオブジェ作品も今回の展示で観ることができます。



大黒屋という場でお互い切磋琢磨してきた二人の展示は心がほっとするような優しい空間になっており、それぞれに自然との向き合い方が表現されています。

両作家によるアーティストトークは2月18日(月) 20:00-21:00。
展示は2月27日(水)まで開催、両作家在廊日は1,17,18,27日です。
板室ならではの冬景色もお楽しみいただけます。ぜひ大黒屋までお運びください。

会期中の休館日:2月5,6,7, 19,20,21日