2020年4月8日水曜日

松岡信夫展

4月3日より大黒屋サロンにて「松岡信夫展」が開催されております。


松岡信夫さんは京都府生まれ、京都市立美術大学(京都市立芸術大学)を卒業後、ディスプレイ会社で店舗のウィンドウの演出に携わったのち、鉄の素材としての純粋さに心惹かれ、鉄の仕事を通して芸術表現と日常用具との橋渡しを目指し制作活動する作家へと転向、現代の暮らしの中から新しい生活の装具を生み出すスタイルを構築し、これまでに多くの店舗、公共施設、また個人宅の内外装など幅広く手掛けてきました。


鉄はヨーロッパの都市文化を形成し時代に残る普遍的なものですが、日本人らしさのある純粋な自分を表現できる鉄を目指し、松岡さんはアフリカの鉄にインスパイアされてモノ作りのために独自の柔らかみのある鉄を作ることにしたそうです。


大黒屋サロン正面の壁面に展示した作品は周囲が自然に囲まれた板室だからこそ、ふにゃっと丸みのある鉄は雲に、くにゃっと曲がった鉄は山の稜線に視えるように配置、状況性に応じてモノが何にでも変化できて違う世界を見せる、自然の中にある力とそこから生まれる純粋な自分を形にすることがテーマであり、作品を通して花や自然界に触れ合ってもらうことが希望だといいます。

照明の作品は自然界にある木漏れ日や水面の反射など太陽の熱と光を純粋に感激できるような仕組みが施されていて、鉄は道端に捨てられて自然に腐食し錆びた表情が特徴的な鉄くずを拾ってきたもので本人曰く自分の好きな錆び方があるそうです。夜空の星々が煌く美しい景色に見える作品もあります。

この花器にはどういう花が似合うんだろう、と考え自然から学ぶことが豊かな生活や生の仕事に繋がっていく。生の仕事とは、切る、穴をあける、叩く、焼くといった基本的な技術、既成の事実としてある技術を使わずに、思いが先行した表現する技術を用いること、そしてその技術開発を続けて独創性を持つことが大事だといいます。

空気の流れを作るような花器、それぞれの形によって空間へのアプローチが変化します。

人形は楽しげで明るい様子が印象的なものや、首、腰、足の部分を叩いて自然に出る形だけで表現する日本のモノ作りを強く意識して制作されているものがあります。

鳥の人形でも表現している内容は人間の生活の一部で、鳥達の位置や向きで家族の機微を表現することが可能で玄関にそれぞれの鳥を置いているご家庭では話したい時には向かい合わせに置いたり、お出かけしたい時には鳥を連ねるように置いたりするなど活用しているそうです。

壁面の作品には、マンションのボードは重いと剥がれてしまうため軽いものに仕上げ虫ピンで留めることができるように工夫がされており、建築家とよく話し合いお互いに何を求めているか考えることが得意な松岡さんのモノの許容力を広くするという思いも込められています。

フロントのカウンター奥にある屏風のブルーは自然変色させた絶妙な色合いで周囲の空間と花を綺麗に見せるために制作、モノ自体が主役ではなく自然の美しさを際立たせるため背景としての役割を持たせていて、空間に対してのモノのサイズ感が一番大事だといいます。


今回で4年ぶり3回目となる大黒屋での個展、花器、照明、テーブルや椅子、オブジェなどおよそ150点を展示しております。松岡信夫さんの鉄の仕事、この機会にぜひご高覧ください。

会期:2020年4月3日(金)− 4月29日(水) 9:00 - 17:00
会期中の休館日:15,16日 
※展示は宿泊以外の方もご覧いただけます。


2020年3月29日日曜日

第204回 音を楽しむ会

3月の音を楽しむ会は鼓 藤舎呂英さん、笛 福原徹彦さん、舞踊 花柳美輝風さんによる演奏会が行われました。


鼓と笛による「飛翔」は一調一管の楽曲、固く結ばれた紐を解くように悠々とした鼓の音と草木が芽吹くように優しげな篠笛の音が鳴り会場の雰囲気を柔らかくしていき、最後は忽然と甲高い能管の音が鳴動して絶妙な緊張感が生まれました。


曲間にはお二人から小鼓と大鼓の構造や歴史、笛の種類として繊細な旋律を表現できる篠笛と鋭く強い音が特徴的な能管など楽しく勉強になる楽器のお話をしていただきました。


「獅子」霧がかる階段の上、霞んだ白い光を浴びた社に降り立つ神々しい獅子、跳躍する勇猛な姿が会場に現れたかのような迫真の鼓と笛の音色が響き、情景と音楽が次々と塗り変えられていく劇的な楽曲展開に衝撃を受けました。


「花」4部構成からなる楽曲で舞踊の花柳美輝風さんが登場、手に持つ扇を目で追っていると紺藍の夜空に輝く月明かりに照らされてゆらゆらと舞う花の姿が視えてきました、それは美輝風さんの舞踊に呼応してひらひらと舞い続け楚々とした一つ一つの立ち振る舞いが絵画のように美しく流れていき、華美な鼓と笛の音がその様相をより鮮明に写していました、音と舞の素晴らしさに感動しました!


美しい鼓と笛と舞を堪能できた音を楽しむ会となりました、ご来場いただいた皆様ありがとうございました!


2020年3月7日土曜日

大黒屋 コレクション展

3月1日より大黒屋サロンにて「大黒屋 コレクション展」が開催されています。

菅木志雄「潜空」

村井正誠「風」

 李禹煥「ある黙示録より 3」

大黒屋サロンにて毎月企画開催している展覧会からコレクションされた村井正誠、菅木志雄、李禹煥、磯谷博史、染谷悠子、加藤直子、對木裕里などの作品を展示しております。

加藤直子「tightrope」

染谷悠子「リッカの季節 -ヤク-」

對木裕里「土地」

磯谷博史「事のもつれ」


またサロン空間の一部で骨董市のように器、骨董品、飾り物、茶托、花器など特別展示販売も行なっています、ご来館の際はこちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

会期:2020年3月1日(日)− 3月30日(月) 9:00 - 17:00
会期中の休館日:3月3,4,5, 17,18,19日 
※展示は宿泊以外の方もご覧いただけます。

2020年2月28日金曜日

第203回 音を楽しむ会

2月の音を楽しむ会はフルート森川道代さん、ピアノ安宅薫さん、チェロ増本麻理さんによる演奏会が行われました。


美しいメロディーと豊かな色彩が特徴的なゴーベール「ロマンティックな小品」は石畳の道を進むようにゆっくりとした歩調で奏でられました。


バッハ「フルートソナタ変ホ長調 BWV1031」の序盤は宮廷で軽やかなステップを踏むようにウキウキとした音色、中盤は一転して哀しげで冷たいガラスのように儚い旋律、そして終盤は赤と褐色の装飾的で華美な色吹雪が舞うように煌びやかな音が鳴り響き、舞踏会のようにドラマティックな音楽が印象的でした。


パラディス「シシリエンヌ」はチェロとピアノによる陽だまりのように暖かみのある楽曲、
フォーレ「シシリエンヌ」はフルートとピアノによる冷雨の中で佇むような哀愁感漂う楽曲、今回の演目で多く使用されているシチリアーノ(ゆるやかな8分の6拍子か8分の12拍子)が随所に表現されておりデュオによる静謐な音楽に癒されました。


優美な4楽章からなるドビュッシー「ピアノトリオNo.1 ト長調」は一日の思い出を振り返りながら家路につくように穏やかなハーモニーが流れ、アンコールはトリオによるフォーレ「シシリエンヌ」、板室の翡翠色の木々に降る雨雫の情景と郷愁の念が感じられた深いエレジーが鳴り響きました。


フルート、ピアノ、チェロの優雅な演奏を堪能できた音を楽しむ会となりました、ご来場いただいた皆様ありがとうございました!




次回の音を楽しむ会は3月26日(木)、鼓 藤舎呂英さんです。
どうぞお楽しみに!

2020年2月10日月曜日

村井正誠 版画展

2月7日より大黒屋サロンにて「村井正誠 版画展」が開催されております。


村井正誠(1905-1999)は、日本の抽象絵画のパイオニアの一人で、戦後はモダンアート協会の創立メンバーの中心的存在として活躍。「人」をテーマに絵画を制作してきた村井の作品は、鮮やかな色使いと大胆なフォルムの組み合わせが独特で観る人を惹きつけます。


1928年から1932年まで滞欧し、同時代の最先端の美術を吸収するほか、パリのアンデパンダン展にも出品しました。帰国後1939年からは世田谷区に自宅兼アトリエを構え晩年までこの地で精力的に制作を続けました。


大黒屋代表の室井が35年ほど前に現代アートに興味を持ち始めた頃、最初に購入したのが村井作品でした。それだけに深い思い入れのある作品群になります。今回、フレームを制作し直したことで新たな雰囲気をまとった作品となります。本展では、50年から80年代までの版画作品16点を展示いたします。令和の時代にみても全く色褪せない作品群です。
この機会にぜひご高覧ください。

会期:2020年2月7日(金)− 2月28日(金) 9:00 - 17:00   
会期中の休館日:2月18,19,20日 
※展示は宿泊以外の方もご覧いただけます。

2020年1月27日月曜日

第202回 音を楽しむ会

1月の音を楽しむ会は三味線の佐藤通弘さんと佐藤通芳さん、箏の海寶幸子さんによる演奏会が行われました、今回で6回目のご出演です。


通弘さんと通芳さんの三味線の音色がバチバチとぶつかるように激しく響き合っていた
「津軽じょんから節即興掛け合い」、郷愁の念が呼び起こされるように心落ち着く通弘さんソロ「津軽三下がり」、お二人の三味線の豊かな表現力を存分に堪能することができました。


海寶さんソロの吉田検校作曲「千鳥の曲」では箏の繊細な高音で紡がれた華美な音色が会場を包み込んでいました。


再び通弘さんと通芳さんによる演奏では静寂な雰囲気を帯びた音色が印象的な「十三の砂山」、一転して弾ける音が耳に心地よい爽快な津軽甚句「ドダレバチ」を披露、音楽を聴いていて本当に気持ちよかったです。


轟くように力強い撥の音と疾走感ある流暢な旋律が渦巻いた通芳さんソロ「津軽じょんから節」、桜吹雪が色鮮やかに舞い散る情景を鮮烈に音楽で映し出した海寶さんソロ「さくら変奏曲」、臨場感あふれる音楽体験に感動しました。


最後は通弘さんと通芳さんによる「荷方節」、音色で対話する巧妙に噛み合った音楽は体を持って舞台で踊っているような迫力があり、最後はお客様と合わせた「日本一!」の掛け声と三本締めで締めくくり、アンコール「三味線ポルカ」では明るくユーモアのあるパートや超絶技巧の高速演奏が繰り広げられ、再びお客様から「日本一!」の掛け声と三本締めが起こり会場は大いに盛り上がりました。


三味線と箏の魅力を存分に堪能した素晴らしい音を楽しむ会でした、ご来場いただいた皆様ありがとうございました!



次回の音を楽しむ会は2月26日(水)、フルート 森川道代さんです。
今年も音を楽しむ会をどうぞよろしくお願いいたします!お楽しみに!