2026年7月3日金曜日

2026年7月 吉田 佳道 展

 板室温泉大黒屋では、202673日(金)から728日(火)まで、竹工家・吉田佳道の個展を開催いたします。当館では初めての個展となります。吉田佳道は、長野県安曇野市を拠点に活動する竹工芸作家です。1988 年に大分県別府にて竹工芸を学び、1993年に安曇野にて独立。以来、「竹の工芸 よしだ」として花籠をはじめ、茶籠、盛器など、日々の暮らしに寄り添う竹の仕事を続けてきました。


 日本の竹工芸には、茶の湯や花の文化とともに育まれてきた歴史があります。吉田の仕事もまた、その確かな技術の上に成り立っています。しかし、その関心は技巧そのものを示すことよりも、日常の中で自然に使われることへと向けられているように思われます。吉田が手掛ける作品は、使うことを前提として生み出されたものです。細く割られた竹ひごは、編まれ、曲げられ、組み合わされることで、軽やかでありながら確かな構造を持つかたちへと立ち上がります。また近年は、編むことを前提としてきた竹工芸の枠にとどまらず、あえて編まない竹の表現にも取り組みながら、素材との向き合い方を広げています。その仕事には、確かな技術に支えられながらも、どこか穏やかで親しみのある空気が漂っています。

 
 吉田の作品には無理のない美しさがあります。それは強い造形性を主張するものではなく、素材の性質や用途に丁寧に向き合うことで生まれる、静かな端正さと言えるかもしれません。作品はあくまで静かにそこにあり、暮らしの風景の中に自然と溶け込んでいきます。

 とりわけ吉田の花籠には、花を活けるための細やかな工夫が込められています。銅製の落としの形状や位置、倒れにくくするために施された見えない重りなど、それらは花が自然に収まり、安心して使うためのものです。そのような工夫は決して目立つものではありません。しかし、使い続ける中で、作品がいかに丁寧につくられているかに気づかされます。見えない部分にまで心を配ること。その静かな美意識もまた、吉田の仕事の大きな魅力と言えるでしょう。また、吉田の花籠には野の花や山野草がよく似合います。道端に咲く草花をひと枝活けるだけで、その場の空気は少し変わり、季節の移ろいが身近なものとして感じられます。



 本展では、花籠を中心に、竹の素材感と構造の美しさを感じていただける作品をご紹介いたします。夏の盛りを迎える頃、竹が生み出す涼やかな陰影と、手仕事の確かさ、そして暮らしの中に息づく静かな美しさに触れていただけましたら幸いです。

どうぞご高覧ください。


会期 : 2026年7月3日(金) - 7月28日(火) 10:00 - 17:00

※7月3のみ13時から開館いたします。

※展示は宿泊以外の方もご覧いただけます。