板室温泉大黒屋では、荒木悠の個展「二度見 TAKE TWO」を開催いたします。荒木の大黒屋での個展は、2021年の「三泊五日 THREE DAYS, FIVE NIGHTS」以来、二度目となります。前回の展覧会から5年。その間、荒木は十和田市現代美術館、京都国立近代美術館での個展をはじめ、国内外で発表を重ねてきました。映像を主な表現として活動する一方で、その作品には一貫して、文化や時間、現実と物語、二次元と三次元といった異なる領域の「あいだ」に目を向ける姿勢があります。
二度目の個展となる今回は、邦題を「二度見」、英題を「TAKE TWO」としました。
一度見たものを、もう一度見てみる。それは単なるやり直しではなく、同じものについて改めて考え、別の認識の回路を探ってみること。そんな意味を込めています。
前回の個展「三泊五日 THREE DAYS, FIVE NIGHTS」は、国際日付変更線をまたぐ移動から着想を得たものでした。今回もまた、展覧会全体の構成を通して、さまざまな境界を物質的に探ることを試みています。
例えば、季節の境目。夏と冬を繋ぐ、そのあいだにある秋。個人的に最も好きな季節でありながら、ここ数年は心なしか、その訪れや移ろいがいささか唐突になっているように感じます(気のせいであればよいのですが)。映像編集に置き換えるなら、秋はショットとショットのあいだに潜む時間のようなものかもしれません。私の考える美しい編集とは、見る人を物語に没入させるために、繋ぎ目を意識させず、編集の痕跡が見えないほど自然に、異なる時間や空間を結びつけるものです。そこには、境界をつくりながら、同時にその境界を見えなくするというパラドックスがあります。夏から冬へと移り変わる時間もまた、唐突なカットではなく、二つのショットがゆっくりと重なり合うクロスディゾルブのようなものであって欲しいと思います。
本展には、あえて季節外れのシーンやモチーフが並んでいます。それらが「いま・ここ」でしか感じることのできない季節感を逆照射する装置となり、異なる時空間やスケールの揺らぎを楽しんでいただければ幸いです。
荒木 悠
