2019年8月30日金曜日

第197回 音を楽しむ会

8月の音を楽しむ会は笛 福原寛さん、囃子 山田崇さん、三味線 味見優さんによる演奏会が行われました。


最初は福原さんの笛による「会津幻想曲」。山深い会津の猪苗代湖に影を落とす磐梯山、その山の後ろから聞こえてくる会津の唄はこだまが返るように心に響く曲。笛の音色によって頭の中で徐々に立ち現れてくる霧がかった山々の風景が印象的で、板室の空気感と調和した音色が心地よく響きました。



山田さんと味見さんも登場して演奏された「囃子と三味線で綴る日本の四季」は、厳かな新春の寿ぎの舞と「三番叟(さんばそう)」による”春”、華やいだ祭囃子の音による”夏”、秋草の野に聞こえる笛の音と虫の声が相まって深まる”秋”、しんしんと降る雪夜は人恋しく、ほのかな明かりのなか静かな時が流れ、やがて外は吹雪の様子になる”冬”、とそれぞれに表現されました。
音が色彩を持って語りかけてくるようで、河原に舞う桜の花びらと爽やかな陽光、煌びやかな祭りの灯、燃えるように美しい紅葉の景色、雪に覆われた白銀の世界、春夏秋冬それぞれに明瞭なイメージが伝わってきました。板室の四季の移ろいが感じられる曲群でこれから始まる秋の紅葉が楽しみになるような印象を受けました。


福原さん作曲「深山幽谷」は俗界を離れた清浄な地である「仙境」と森羅万象を超越したような存在に思いを馳せ、文殊菩薩の使いとされる霊獣「獅子」を合わせた曲。神々しく厳かに奏でられる音色は気が引き締まるような緊張感があり轟々と体の中心に響いてくるようでした。



最後は福原さんが広島原爆ドームへの鎮魂の曲「ドームの祈り」を披露されました。今なおその惨劇を生々しく伝える広島の原爆ドーム、夕日に映えるドームはまるで中東のモスクを思わせるような影のみ落とす。鎮魂の祈りはやがて子守唄となり、静かに響き渡る。未来へ語り続ける原爆ドームへ平和の思いを込めて。
福原さんが平和を切に願うように、粛々と祈りの音色を奏でられた姿がとても印象的で胸に沁み入るように感動しました。


板室の爽やかな空気感と四季の移ろいが感じられた美しい音色の数々、御三方が奏でる厳かで臨場感溢れる音楽世界に感動した素晴らしい演奏会でした、ご参加いただいた皆様ありがとうございました。



次回の音を楽しむ会は9月26日(木)、ソプラノ 西田真以さんとピアノ 中ノ森めぐみさんによる演奏会です、どうぞお楽しみに!