2026年3月7日土曜日

2026年3月 「Ephemera」

 板室温泉大黒屋では、2026年3月7日(土)から3月30日(月)まで、企画展示「Ephemera」を開催いたします。

Ephemera(エフェメラ)とは、展覧会の案内状やパンフレット、ポスター、DM など、一時的に制作される印刷物の総称です。語源はギリシャ語 ephemeros(儚い)に由来し、本来は短命で消えゆくものを意味します。展覧会が終われば役目を終えるこれらの紙片には、その時代の空気や美意識、デザイン、作家や場所の痕跡が凝縮されています。作品そのものではなく、展覧会という出来事を取り巻く時間や場の記憶を静かに留める存在でもあります。

本展では、アートブックのディストリビューター twelvebooks 代表・濱中敦史 が長年収集してきたエフェメラに加え、印刷物や資料のアーカイブ的実践を行うプロジェクト ens(苑ス)の鈴木貴也の協力のもと、展示と販売を交えながら紹介します。



展示では、1970 年代以降のミニマルアートやコンセプチュアルアートを中心とした展覧会文化に関わるさまざまな印刷物をご覧いただきます。Donald Judd、Sol LeWitt、Carl Andre、Lawrence Weiner、Fred Sandback、Richard Serra、Dan Graham などの作家たちの展覧会案内状やインビテーションカードをはじめ、Agnes Martin、Ellsworth Kelly、Bruce Nauman、

Blinky Palermo、On Kawara などに関わる資料や印刷物が並びます。

これらの多くは、ギャラリーや美術館が展覧会の告知のために制作し、来場者や関係者に配布したものです。本来は一時的な役割を担うものですが、その小さな紙片には、当時の展示空間や流通、出版文化、そしてアーティストたちの活動が交差する痕跡が刻まれています。本展では、展覧会や出版の現場で生まれたこうした印刷物に焦点を当て、エフェメラという視点からアートを取り巻くもうひとつの文化をご紹介します。



日本においてこうした Ephemera(エフェメラ) の価値を考える上で、1990 年に山梨県清里に開館し2014 年に閉館した 清里現代美術館 の存在は重要です。同館は現代美術の作品だけでなく、展覧会の案内状やポストカード、出版物、書簡など、作家や展覧会を取り巻く多様な資料を収集していたことで知られています。閉館後、その膨大な資料は同館の元スタッフである廣瀬友子によるプロジェクト telescope によって整理・公開され、アーカイブ出版などを通じて新たな形で紹介されています。

このアーカイブの整理や出版には twelvebooks 代表・濱中敦史 tata bookshop / gallery の石崎孝多らも関わり、清里現代美術館の資料は現在もさまざまな形で紹介されています。本展では、清里現代美術館のエフェメラを収録したアーカイブブックなどの関連書籍もあわせて紹介・販売します。



本展は、濱中敦史の全面的なご協力のもと開催されます。エフェメラという文化が日本でも広く知られてほしいという思いにも支えられながら、展覧会という出来事の周囲に残された文化の断片をご紹介します。エフェメラという視点から、アートを取り巻く印刷文化に触れる機会となれば幸いです。


会期 : 2026年3月7日(土) - 3月30日 (月) 10:00 - 17:00

※3月7日、20日のみ13時から開館いたします。

※展示は宿泊以外の方もご覧いただけます。