8月の音を楽しむ会は大黒屋オペラによる演奏会でした。今回は「ヴェルディ 椿姫 名場面」をテーマに、通常2時間ほどかかるオペラを40分ほどに凝縮して演奏してくださいました。
〜出演者〜
ヴィオレッタ:和田奈美さん(ソプラノ)
アルフレード:城宏憲さん(テノール)
ピアノ:中橋健太郎左衛門さん
〜第1幕:華やかなパリの夜会〜
静かに照明が落ちたステージに、ぽつりと浮かび上がるピアノと中橋さんの姿。切なく哀愁を帯びたピアノの音色が、会場の空気を一瞬で引き込みます。しかしその静寂を破るように、オペラ『椿姫』の「乾杯の歌」が響き渡ります。城さんの甘く深く、安心感に満ちた歌声。そして和田さんの、どこまでも澄み渡る伸びやかな歌声。二人の声が重なり合い、鮮やかな色彩となって会場を満たしていきました。
〜第2幕:田舎での暮らしと悲劇の別れ〜
ヴィオレッタの悲しく切ない決断と、アルフレードの裏切られた憤り。お互いを心の底から愛していたからこその決断と行動が、お二人の表現力豊かな歌声によって熱演されました。特に、アルフレードがお札を握りしめてヴィオレッタを侮辱する場面の鬼気迫る表情は、同じ空間にいるからこそ伝わる熱気にあふれ、非常に見応えがありました。
〜第3幕:悲劇の結末〜
病床のヴィオレッタを一人にしてしまったアルフレードの後悔と、会えなかった時間を取り戻すかのように愛を伝える焦燥感。 対するヴィオレッタは、アルフレードに心配をかけまいと健気に明るく振る舞いながらも、その裏に寂しさや苦しさを滲ませます。二人で過ごす儚くもどこか温かみのある最後の時間を、歌声だけでなく、表情、仕草、そして照明の演出によって存分に堪能することができました。
劇場とは一味違う、演者との圧倒的な近さが生む臨場感に終始圧倒されっぱなしでした。40分という濃密な時間の中に『椿姫』のドラマが凝縮され、大黒屋の空間に響き渡る演者の息遣いや震えるほどの熱量が、ダイレクトに心に響く素晴らしい時間となりました。
次回は9月26日(土)クラヴィコード 内田輝さんによる演奏会です。
どうぞお楽しみに!
