2019年11月12日火曜日

11月 磯谷博史展 「物音」  Hirofumi Isoya 「With Hidden Noises」

11月1日より大黒屋サロンにて磯谷博史さんによる個展「物音」が開催されております。


磯谷さんは身のまわりで出会う事物をきっかけに、私たちが持つ出来事への認識や時間の捉え方について思考しています。大黒屋での個展が2回目となる本展示では新作を含む写真作品を中心に、被写体に付随していたであろう「音」を意識し展示構成を決めていきました。
棚の上にある写真「事のもつれ」は、まさにその棚から額が落下する様子が撮影され、私たちの時間感覚にひとつの違和感を投げかける作品です。過去、現在、未来、人が時間という概念をどういう風に認識しているのか、物事を判断する手順の見直しを示唆し、作品制作の技術や形式に対して考え方を挟み込む意図があります。
「事のもつれ」
セピア色のモノトーン作品は、カラーで撮影された写真から色彩を奪い、かつてその画像の中にあった特徴的な色を額に着彩するシリーズ。一枚の画像を形と色に振り分けることによって、写真が捉える「過去」と、着彩された物としての額の「現在」を関連づけます。

人間が元々持っていたある種の繊細さを取り戻すことに意味があるのではないか、といった思いで日常のディテールを瞬間の出会いとして写真に収め、モノの関係性や状況性、物理的現象を見つけた時の視野でトリミング、その後撮り貯めた写真を整理する中で作品を制作するそうです。

大きなボトルに約50ℓの蜂蜜と集魚灯を入れた作品「花と蜂、透過する履歴」は、人が光源を見つめる機会として、蜂蜜のとろりとした物質性が周囲の空間へ影響しゆっくりとした時間を感じる装置として、花の蜜が蜂や人を通して蜂蜜となる過程を内包した作品となっています。

現代美術とは「人間について」問いかけることだと語る磯谷さんの作品には、現代のコミュニケーションツールとしての役割があります。
展示タイトル「物音」について磯谷さんは「被写体にかつてあった音を想像すると、静止した画像から出来事や物の振る舞いへと意識が広がる。作品は出来事で、プロセスであることが強調される。」と話しています。写真には撮影しきれなかった固有の「音」があり、そこにあった「音」が隠されていると捉えることもできるでしょう。


展覧会は空間のメディア。磯谷さんが鑑賞者の体験を意識し展示設計した大黒屋サロン空間を、是非この機会にご高覧いただければ幸いです。

毎月26日に開催している「音を楽しむ会」。11月26日(火)は、音楽家の蓮沼執太さんによる、本展「物音」に関連する特別パフォーマンスを行います。

=======================================
会期:2019111日(金)- 1129日(金)
会場:板室温泉大黒屋サロン  展覧会はご宿泊以外の方もご覧頂けます。
協力:青山|目黒


♫音楽家 蓮沼執太によるパフォーマンス:1126日(火)16:00 -17:30 
※音楽会の参加は宿泊、要予約(電話予約またはHPのみ)